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柳谷村が過疎化した土壌は、その地理的な孤立性にある。愛媛県と高知県の県域に所在するこの「僻地」は、集落そのものが存立する上で困難な状況にあったといえるが、それでもいまより多くの集落が存在したのは、自給自足が可能な村落システムがあったからである。道路網の整備によってその孤立性はようやく克服されてきたといえるが、解消されたわけではない。また道路の整備によって近隣都市の移住者のUターンが可能となったが、しかしそれが実現するために必要な受け皿(職場)がない。もともとそれが欠けているために起こった人口流出であったことを考えればUターンは容易なことではない。

先に述べたことを増幅するものとして、当村が全域山間部にあり、集落が散在していることがある。前述のように各種道路が村内を毛細管の如くに通じ、産業上はもとより日常生活の上での不便の解消に不断の努力が続けられているが、上水道の施設ひとつとってみても、その実現には困難が横たわっている。そしてこうした要素は、すぐにも人口流出の条件に転化したのである。

 

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かつて当村でも「基礎集落」といった概念で集落をとらえ、それに基づいて過疎化の対策が考えられた。基礎集落とは、簡単にいえば集落内で基準的な社会生活を享受しうる条件を備えた地域単位のことであり、柳谷村では別掲図の如き8地域が設定され、これらと役場のある落出を中心として1次生活圏が形成されているとみなした。また他の町村とともに、上浮穴郡の郡全体で第2次生活圏を形成し、そこでは久万町が中心であるとした。こうした観点から、過疎化を解消する方法として、いくつかの集落の再編成が試みられている(『昭和50年3月過疎地域問題調査報告書』第4章による)。

 

 

 

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