人口の流出に関連してふれておかねばならないのは、当村の場合、特有の原因があったことである。それは村内に設置された五ケ所の水力発電所がもたらす経済的恩恵(年間4億円)は、上浮穴郡5ヶ町村のなかでも当村を裕福で文化度の高い村にし、村外、ことに松山に出て教育を受けたい(受けさせたい)という気風を生み出し、それが高校生の段階で若者を村外に流出させた理由ともなったからである。発電所の建設には多数の村内外の人間が動員され関わったが、発電所は外からもたらされた、いわば文化の象徴でもあったのである。
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