こうした事情は、当町出身の民俗学者、故宮本常一氏やその協力者たちの著わした『東和町誌』の本篇(刊行は昭和57年)やそれに続く各論篇にくわしく述べられており、古い時代から開発と廃絶をくりかえして現代に及んでいる離島における集落の諸問題が知られる。伝承のように島の入植。開発者たちが瀬戸内水軍に出自する人たちであったとすれば、もともと定住に固執しない気風の持主たちであったわけで、のちに述べるが、それが島外への出稼ぎ、海外への移民を苦にしない土壌を培ったのかも知れない。
前ページ 目次へ 次ページ