通年営業が出来ない。これは上村の観光にとってはかなり痛い。冬を克服するのは難しいとしてもそれを補充する手だては何かないものだろうか。
上村の特性は、南アルプスの深奥部の山村であることだろう。この特性を生かした観光は、日本の山村の原風景を生かして、土地の人たちとの人間的交流を通じ都会の人々が穏やかで落ち着いた生活を実感できる滞在型観光であると思われる。はなやかな施設よりは、ホームステイ・タイプのミニ民宿がなじむかもしれない。特産物の食材(キビ、粟、そば、キノコなど)を活用した食事も研究したい。土地の人たちが訪れる人々を迎え入れるホスピタリティを身につけることも大切である。
足下の生活環境整備も進めたい。とりわけ力を入れたいのは下水処理である。そのための国の財政的な応援も必要である。
3 女性に優しい
上村でも、過疎集落に共通する問題として、「働く場がない」こととともに、「嫁がいない」が深刻な話題となった。集落の現場での住民との懇談で「自分の娘はこの土地から出ていってほしいと思っている母親が少なくない」という発言があったことは特記しておきたい。自分と同じ苦労をさせたくない親心という意味だろうか。一般に、過疎地域では古い家制度や非近代的なコミュニティが存在しがちで、それが女性に嫌われている。これは過疎問題を考える上で非常に重要なことである。地域は男と女がいなければ成り立たない。女性が住みやすい地域、“女性に優しい”地域づくりの視点は、とりわけ過疎政策に欠かせないことを強調したい。
4 がんばれ上村
過疎は“守り”一辺倒から“攻め”も摸索する段階に入りつつある。過疎政策も転換期にさしかかっている。過疎自治体も、そうした状況を複眼的に見つめて対応する必要がある。上村はトンネル効果で人口の減り方は小さくなったが、減少は続いている。1,000人台回復は容易ではない。行政は各集落の状況を引き続き的確に掌握して対応してほしい。上村の挑戦はまだ始まったばかりだ。これからが正念場である。がんばれ上村!
<参考文献>
村勢要覧(1994年)
「霜月祭」(上村)
「新しい交流の扉が開く」(建設省飯田国道工事事務所)