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場者数が落ち込んでいる。

観光と関連する今後の大きい課題としては、秋田市や田沢湖など町外へ通じる道路の整備が期待される。平成10年度に予定される北の大館能代空港の開港による効果をどう活用するかも課題となる。また、長年の悲願だった秋田内陸鉄道の全通と秋田新幹線の開通によって、南への可能性が開けてきたので、この“南”戦略をどう組み立てるかも課題になると思われる。同町は、その地勢や歴史的沿革から広域圏感覚は北志向だったと思われるが、今後は南へも目を向ける必要があるのではないか。

秋田内陸鉄道は阿仁町の活性化に欠かせない命綱の一つだと思われる。この第三セクターは利用状況が悪く、利用者数は損益分岐点である年間利用者110万人を下回り、苦しい経営となっている。このままではじり貧で存続が危ぶまれる事態になりかねない懸念を感じた。阿仁町を含めた沿線地域の住民が皆でこの鉄道を支えていく具体的な行動計画が必要ではないか。

地方分権の受け皿論と関連して問題となっている市町村の合併については、阿仁町は消極的な立場をとっている印象を受けた。過疎には、その地勢や経済などから合併になじまないところが多い。地域それぞれの営みがあり、一律に合併というのは過疎対策としてマイナスが大きい。ただ、過疎の活性化には広域化は非常に有効である。

とりわけ、過疎町村の多くが志向する“観光”で生きる上で、複数の市町村が広域的に連携、協力することを積極的に考えるべきだと思うし、そのための地域のコンセンサスを深めたい。

 

3 守りと攻め

働く場がない。若者の流出が続く。高齢化少子化と合わせ、人口は減り続け歯止めがかからない。一方で、長年にわたる過疎対策の積み重ねで、地域の日常生活はそれなりに安定し、人々の表情、各集落のたたずまいには明るさがうかがえた。その明るさに希望が持てるし、行政の努力も高く評価されていいと思う。

国レベルでは行革関連で公共投資の圧縮が求められているが、過疎地にとってはまだまだ社会資本整備は命綱であることを痛感する。今後、過疎地の社会資本整備をどこまで継続的に進めることになるのか、将来いずれかの段階で過疎上に歯止めがかかるのか、10年後、20年後は?と考えると不安がふくらむし、事実過疎集落の住民の屈託のない表情の裏に不安の影が読みとれた。そんな状況の中で、一つの地域について集落活性化の方向性を示すことは難しい。行政は引き続き各集落の状況を十分に掌握、点検し、持続的に緊張感を持って取り組んでいくということだろう。当面は、引き続き各集落の生活環境の改善に重点を置きつつ、活性化への挑戦に取り組むという“守

 

 

 

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