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主催者側からみた 使いやすいホール・使われやすいホール

市民から愛され、スタッフが誇りに思えるホールへの提言

国立劇場事業部 副部長 持田諒

 

県民会館、市民会館、市民ホールなど公共団体によって、多目的に設立されたものを私は、ここでは「ホール」と一括して呼称する。

ある政治家は「行政とはつまり土地の人々へのサービスである」と言い切った。また或る行政の長は「県民・市民ホールこそ実は行政側がより早く、より多くの人々に、より日常的に県民、市長村民に『行政』を実践していける重要な場だ」とも言ったと伝聞した。

こうした秀れた見識を持った人々は多くない。極少とさえ考えた方がいいと思うは、竹の子のよう乱立し次々と建設されたホールが、実は唖然とするような内実であったりすることを聞いて驚くより、何のためにホールを建設したのかさえ疑問に思うことがしばしばだからだ。

「ホール建設」と「運営スタッフ」「舞台スタッフ」は一体化して考えられねばならない当然なことさえが、実は理解されていないようなのだ。

ホールを検証して行くにあたって、大切な柱は五つと考える。

1. 人材

2. 建物

3. 財政

4. 組織

5. 行動(実践)

この五つの柱は全て「県民」「市民」「町民」「村民」といった「土地の人々」に向かっていなければならない。

五つの柱が機能的に活力を持って「土地の人々」に向かって行動を起こしていれば、それは自ら「人々から愛され」「スタッフが誇りに思える」ホールに育っていくのである。

何故そういかないのか。

舞台スタッフが「舞台」という限られた世界で仕事をしていく。その問題点を論ずる以前に、実はこの五つの柱が考えられ、チェックされていってはじめて最も具体的に「土地の人々」と接している「舞台スタッフ」の仕事論に至ると考える。

 

(検証1-人材)

(1) ホールの最高責任者

「ホールの長」又は「最高責任者」の「人材」いかんによって「方向性」も「内実性」ほとんどが決定されてしまうと考えて過言ではない。多い苦情がこの点にある。

つまり、専門の知識や技術力をもっているかどうかでなく、「ホール」の最高責任者が人事の流れの中で腰かけ的に考えているのか「愛情を持っていない」ということだ。

ホールの長が「愛情」を抱いていないホールの中で、「何かを」実践し「土地の人々」に向かおうとしていくスタッフはたまったものではない。

ホールの最高責任者は、率先して「外への触覚」を磨き、より秀れた情報と人と技術を土地の人々に体験させる努力をする一方、「土地」そのものの歴史、風土、人々について深く見解を重ねると共に、ホールの全スタッフの和に向かって静かなる眼と心を開いていかねばなるまい。

その最高責任者の「人物」と「姿勢」こそが、実は全スタッフの心に反映され、ホールが先ず動き出すのである。

(2) 運営に当たる責任者

 

 

 

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