『照明の現状』―デザインから安全管理まで
大阪芸術大学教授 木本敏夫
現場で働いていても、会館・ホールを管理していても、共通して解ることは、思考的な部分ではなかろうかと思います。その辺のことを少しお話しをして舞台照明というのは、こんなふうに創っているのか、じゃあ、現場で働くときも、管理するときもこんなふうに見て行ったらいいなとお解りいただいたらと思いますので、その辺のことからお話しをして行きたいと思います。
(1) 芸術とは
まず第1に芸術とはということになっていますが、芸術というにはそんなに難しいものではありません。非常に簡単なものです。
なぜかと言うと芸術とは、実はドラマなんです。これはもうすべてがそうだと思います。ドラマって何かというと劇なんですね。最近劇空間とか演出空間とか言われますけれど、いろんな催し物が行われる空間、昔は会館とか舞台とかホールとか言ったのですが、最近は空間というふうな言い方をしてきます。そういうふうなところで行われる行為がすべてそういうものに当てはまるわけです。
で、劇ってなんやって言ったらドラマなんですねえ。ドラマってなんやっていったら葛藤なんですね。葛藤と言ったら喧嘩なんです。どういう催し物においても、思想的なことを表現するにしても人間の恋愛感情を表現するにしても葛藤、喧嘩がないとこれはもう始まっていかないんです。好きな奴と嫌いな奴がいるから喧嘩が始まるんですよ。
最近、2極化されてきていると言われていますけれど。とにかく2つのものが喧嘩しないと、それは劇でもドラマでもないという事なんです。
そう言ったものを空間の中で表現して行くって言うのは、それが大きければ大きいはど、火事でもそうですね、喧嘩でも、大きければ大きいほど見ているほうはおもしろいわけで、大きければ大きいほどみんな興味を引くということになります。そう言ったものに照明をして行くということなんです。
だから照明をして、装置も創り、衣装、適切な音もプラスして、美しいものを仕上げて行くということが言えるのです。
で、それが舞台芸術、芸術ということになるのです。舞台の場合は、他の芸術と違いまして集団芸術であるということはもう皆さんご存じの事です。一人で作品ができあがって行くというものは無いのです。
ところが、絵画とかは、あれは1人でやっていくんです。自分だけの考えでやっていくんです。
ところが、劇空間とか演出空間とかで行われる作品は、これは照明だけでもだめでほかのセクション、いろんなセクションがありますけれどそれだけでもだめというこになる。
芸術というのは好き嫌いがはっきりしていますから個人個人によって全部違いますから。好きな人は集団で作るおもしろみ、人間対人間の関係と言ったふうなものを含みながら、意識するにしろしないにしろ、作り上げて行くおもしろさを体験しないことには、これはもうやって行けないのです。だから、個人的には、芸術と言うものは、日本においてはまだまだ趣味の段階にあると思っているのです。それで、そういう美しいものを創るといたふうなことは、いまだに職業として、芸術家とか舞台照明家とか言ったふうな項目は職業安定所に行っても無いですから。サービス業とか何とかに一緒にほうり込まれてしまいますから。だから職業として独立してあると言う事ではないのです。だからまだまだ趣味の段階にあると思います。趣味ということは、好きでないとだめです。
こういう人達が集まっていろんな事をやっていくと。しかしながら、管理運営、わたしも過去に経験がございますがどこそこの税務課から来ました。と言う人が、ぼ〜んと来られますとね、