2-3.バトンの揺れ
吊り物機構の稼働にあたっては、バトンの揺れが事故に直接結びつくことになりますので、揺れが停止してから稼働することになります。
バトンの揺れの原因としては、主につぎのような事項があげられます。
1)仕込み・撤収時のバトン昇降をした場合
2)幕・吊り物・照明などに接触した場合
3)吊り物等が移動荷重(水平・垂直移動)
4)地震
ここで、とくに、地震時のバトンの揺れ方について述べておきます。
バトンは、地震時、振り子のように揺れると考えられます。したがって、振り子の糸すなわちバトン吊り線ワイヤがシープ(すの子滑車)
から長くしておくと、バトンの前後に揺れる周期は長く、大きく揺れます(参照図2-2)。そして、バトンに吊り物などを吊った場合、吊り物などの重量がバトン自重より軽いと図2-3(イ)に示すように揺れ、重いと図2-3(口)に示すように揺れると考えられます。
また、吊り物などを図2-4に示すようにバトンの片側のみに吊ると、バトンは水平状態で半回転しながら揺れます。
地震時の物体の揺れは、地震の発生による地震力が物体に作用することによるものです。その大きさは、吊ってあるような物体であっても、その物体の荷重(重量)に比例して大きくなります。1)2)3)したがって、荷重の大きい吊り物などは、地震荷重が大きくなり、他の物体と接触するとその衝撃力も大きくなりますので注意しなければなりません。
このようなことから、地震時の揺れによってバトン同士が接触しないためには、バトンとシープの長さ(吊り線)を短くしておくことが必要であることがわかります。
そして、バトンがどのような状態(荷重の大きさと荷重状態など)にあるのか、また、どのバトンが、常時、吊り物を吊っているのかを確認し、地震時のバトンの揺れ方を想定して安全対策を推進していかなければなりません。