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問は、痴呆症の可能性がある場合は特に不可欠です。これは、家族に注意深く身支度をされ、医師の診察室に連れてこられた患者に会うことと同じではありません。自宅訪問により、失禁があるかどうか、自宅へのアクセスはどうか、浴室の安全性、冷蔵庫および薬箱の中身などの追加情報を得ることができるためです。

初期評価に続いて、複数分野の専門家による会議で、患者の総合評価が話し合われます。さらに、必要な場合には他のチームとの協議も行われ、ケア計画が作成されます。

すべてのACATは、患者の一般医と効果的にコミュニケーションを図るべきです。特に紹介を行ってきたのが一般医でない場合は、紹介の時点で行うのが最もよいと思われます。これは、よい作業関係を維持するうえで、また一般医は患者の病歴に関する重要な情報をもっており、進行型のケアを行う場合には、不可欠となります。

痴呆症または身体的障害をもつ高齢者の評価や管理は、医療、機能的、社会的、心理的問題に取り組まなくてはなりません。

その第1歩は、患者の医療管理の最適化です。正確な診断および適切な投薬は最も重要です。医療問題を検討する場合には、高血症の管理や、禁煙や運動の奨励など健康促進活動的な第1歩および第2歩の予防措置を考慮することが必要です。医療問題に対処しなければ痴呆症を悪化させることもあります。たとえば、精神錯乱症状の悪化原因は、譫妄状態を引き起こす急性疾患である場合もあれば、単純な便秘が原因のこともあります。

次のステップは、障害に対する対処です。患者の機能評価により、障害の箇所が確認され、リハビリが適切と判断されることもあります。器具の使用や自宅の改造により機能を最大限に発揮させられることもあります。

痴呆患者と関わるうえで、ケア提供者が感じる問題は社会的および心理的問題であることが多く、苦痛緩和管理ケア、カウンセリング、教育などのオプションも考慮されるべきです。また、ケア提供者のストレスも見逃してはなりません。

管理における次のステップは、自宅で安全にケアを受けるための患者の機能低下部分を補うための地域社会サービスの適用です。これは、個別のサービスである場合やケアパッケージという場合もあります。また、進行型ケア管理が必要な場合もあります。上記の各項目に対処した後の最後のステップは、代替施設の必要性を検討することです。これは、患者にとって最も破壊的で、費用的負担を強いる結果となりますが、最も適切な処置であるといえる場合が多々あります。代替施設は必ずしも施設ケアではなく、身体的障害のある人に対する最小限の設備を備えた場所である場合もあります。

ACATは、施設ケアの設備に対するある程度の査定は行っていますが、往々にしてそれらは、継続したサポートを提供するための資金提供は受けておらず、管理が困難な痴呆患者の入所問題に対応できる専門知識を常に有しているわけではありません。特にホステルのような施設側も、この問題に対する専門知識をもっていなかったり、資金提供を受けていないことが多く、その結果、痴呆患者を救急病院や精神病院等の施設に収容することがあります。

 

パイロット痴呆症プログラム

 

3年前、政府は、痴呆症で予想困難な行動をとる人々のニーズに応えるために、評価、診断、助言、サポートを提供する老年精神医学ユニット(PGU)を設立するためのパイロット・プログラムを導入しました。施設に収容されている人々が主な対象者となりますが、地域社会のなかで複雑な痴呆症を抱えた患者の管理を行ううえでACATの活動を援助することにもなります。PGUは必要な場合には追加ケアを購入するための共同資金ももっています。

オーストラリアには、7つのパイロットPGUがあり、各州に1つ存在します。私の勤務するイラワラにはNSWのパイロットがあります。ユニットのスタッフは、老年精神科医、専門医となるための訓練を受けている助手、痴呆症ケアの訓練を受けた看護婦、心理学者、リハビリテーション療法士から構成されています。当地域のPGUは、痴呆症のデイケア・サービスと同じ場所に存在しています。PGUのスタッフは、患者が通常居住している場所で患者の評価を行います。パイロットは1998年6月に終了し、評価プログラムがまもなく始まることになっています。

行動予測が困難な人々と対応するうえでのユニットの主要な戦略は、医療評価、行動チャート、誘因原因の確認、行動管理、リハビリテーション療法、スタッフおよびケア提供者の教育、施設ケアのための短期間のスタッフ追加です。

当地域のPGUに紹介された最初の205人の患者の最近の調査によると、上位10の難しい行動は、興奮、苦悶、身体的攻撃、精神異常の兆候、言葉による攻撃、ふさぎこみ、社会からの引きこもり、要求的で破壊的な行動、徘徊、急性の混乱、抑制の利かない行動、睡眠障害となっています。

 

 

 

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