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救護活動の統制

 

良く統制された救護活動は、1つの共通の目的の下に集まった多くの機関や団体によって成り立ちます。事故への対応がスムーズに行われるようにするためには、各団体の事故時の役割が事前に決まっており、さらに個人が活動に参加する前に自分の役割分担を認識していることがとても重要です。

 

ほとんどの場合(流出場所とその規模にもよりますが)、流出現場に最初に駆けつけるのは地方の野生生物獣医師です。その様な獣医師は、素早く野生生物のおかれた状況を把握して油汚染野生生物救護ネットワーク本部と連絡をとります。そして必要な人員と装備が流出現場に派遣されます。流出現場に一番近い野生生物救護施設に連絡が入り、ボランティアに事故発生の連絡をします。救護活動が続くと、ある作業に関してある団体から来た人達が、事前にそれを担当することになっていたグループよりも適任だということがわかる場合があります。そんな時は、救護活動に必要なそうした専門知識を十分に生かすために作業分担の見直しがなされるべきです。しかしうまく調整するためには、各々の救護活動団体の統率者が誰なのかを事前に知っておくべきですし、その人達の役割を事故が発生する前に明確にしておくべきです。

 

油に汚染された野生生物を現場で見分け、それらを捕獲し、治療およびリハビリテーションの施設でそれらを取り扱い、放鳥し、リハビリテーションが成功した個体を野外で追跡するといった作業には、訓練された専門家とボランティアが必要です。油に汚染された野生生物の被害鳥回収作業に必要な人員の数は、被害を受けた野生生物の数とカバーすべき領域の広さに左右されます。フィールドワークに組み込まれる人の数は、健康と安全に関する教育訓練を受けている人の数によって制限される場合があります。これらの人々は油に汚染された領域に立ち入ることになるので、健康と安全に関する最高レベルの教育訓練を受けていることが不可欠になってくるからです。

被害鳥回収作業は、非常に高度な専門知識も必要とします。何故なら野生生物の健康状態と捕獲によるストレスを、その動物が治療のために捕獲される前に現場で評価しなくてはならないからです。こうした理由から、上記に示したような役職分担のうちのコーデイネーターレベルの役職には、国際鳥類救護研究センター(International Bird Rescue Research Center,IBRRC)のような団体と契約を結んで有給の従業員についてもらっています。彼等はよく訓練されており、いつでも油流出現場に駆けつけることができる体制を整えているからです。私達はこうすることによってカリフォルニアでの事故対応がよりスムーズに進むという事実を見てきました。

野生の海鳥を飼育することはとても大変な仕事なので、野生生物の救護活動をする専門家とボランティアのほとんどは、施設内で油に汚染された野生生物の保護をすることになります。それ故私達はカリフォルニアでの主な訓練を野生生物リハビリテーシヨンスーパーバイザーのレベルに合わせて行っています。救護施設の中で働く人も健康と安全に関する教育訓練を受けなくてはなりませんが、その訓練は施設内で行い、野生生物がさらされている特定の物質やその時に取り扱われている野生生物の種のみが訓練対象になるでしょう。ですから、こうした人達のための安全教育訓練のレベルは、被害鳥回収作業を実施する人たちのそれと

 

 

 

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