講演
「Unified Incident Command」危機管理システムとカリフォルニアにおける野生生物の存在
カリフォルニア州魚類鳥獣保護局油流出防止対策室長
ピート・ボンタデリ
要 旨
アラスカでのエクソン・バルディーズ(Exxon Valdez)号と南カリフォルニアのハンティントン海岸沖でのアメリカン・トレーダー(American Trader)号による油流出事故の後、カリフォルニア州は「海洋油流出事故対策を管理する州法」を制定しました。連邦政府の法律、つまり油汚濁法(1990年制定)(0il Pollution Act of 1990、以下OPA90)も同時に米国議会によって制定されました。州法は連邦の法律よりも早く可決されています。これからお話しする内容は、この2つの法律を調和、統合させる必要性や、それが野生生物救護活動上どんな意味を持つのかについてです。また、事故対策の最中に行われる被害を受けた野生生物の救護とカリフォルニア州で油事故の後に必ず行われることになっている自然資源損害アセスメント(Natural Resource Damage Assessment and Restoration*、以下NRDA)についてもお話しします。
私が室長として指揮を執っているカリフォルニア州魚類鳥獣保護局油流出防止対策室(California Department of Fish and Game,Office of oil spill Prevention and Response,以下OSPR)は、この2つの法律をカリフォルニア州において一体化して実施する責任を担ってきました。この2つの法律を一体化するための作業は、次の2つのことに手をつけることからスタートしました。
1)連邦レベルでの法規作成過程への参加。これは、米国沿岸警備隊船舶対応計画規則(U.S.Coast Guard Vessel Response Plan Regulations)を作成するのに役立ちました。
2)カリフォルニア州海洋油流出事故緊急時計画(State of California's Marine Oil Spill Contingency Plan)に地区別の補足計画を追加するための基礎として、連邦の地区緊急時計画の手順を用いるというOSPRの決定。つまり、油流出に対応するカリフォルニア州の全ての自治体の対策手順を、カリフォルニア州海洋油流出事故緊急時計画で規定するということです。
連邦レベルでの法規作成過程へ参加した理由は、連邦の法律が完成したとき、同時進行で作成されていた州の法律も連邦の法律と同じ原則に基づいたものとするためです。また、連邦と州の法律が矛盾していなければ、別法の要求が満たしやすくなるからです。OPA90は、連邦政府の法律に矛盾しない限り、各州が各々の環境保全を一層促進すような法律の制定を認めています。
カリフォルニア州は実際に連邦政府の法律を上回るような州の規制を持っています。例えば、連邦政府よりカリフォルニア州の方が金銭的な保証を強く要求しています。州が設立す
*カリフォルニアの州法は、連邦政府の法律よりきびしい環境回復義務を州政府に要求している。