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を実現することができた。扱いにくい燃料電池技術がその乗用車では目に見えないものとなった。水素タンクは屋根のカバーに隠れ、燃料電池はスーツケースサイズの箱の中に収まり、後席シートの下に隠れた。走る実験室はスペースのある多目的自動車に進化した。愛着のある先駆車の名前よりNECAR?Uと名付けられた。

“我々は燃料電池の研究に、従来より体制を整えつつあります。”とダイムラーベンツの研究責任者Hartmut Weuleは言っている。彼は、研究者達がなしえた仕事に対し誇りに思っている。

なぜダイムラーベンツは大金をこの技術の開発に投資したのであろうか。その理由は、環境問題に取り組む企業の新戦略でだけはなく、新世紀に自動車を残り続けることを確実にするためでもある。後者が当たり前のこととしてとらえられない2,3の事実がある。現在、8億台の自動車が世界中にある。専門家はこの数字が2030年には16億台になると予想している。

この数字には先進工業国及び急速に工業化が進むアジアやラテンアメリカの国々を含んでいる。そのため環境問題が起こると予想される。輸送が石油燃料に頼っている限り、二酸化炭素工ミッションは地球上でのエネルギー消費に応じて増加するだろう。このシナリオに対応するため自動車産業ではすでにディーゼルやガソリンエンジンでの燃料消費やエミッション低減のための努力を行ってきた。しかし、それだけをやっているわけではない。:代替燃料を使うための厳しい努力も行っている。Weuleは次にように言っている。:“過去15年以上も代替動力システム研究やそれらの企業化調査に何百万ドルも投資してきた。”

いくつかのオプションは可能性を持っており、さらに開発が必要であることがわかった。たとえば、気体燃料である水素や天然ガスで運転できるよう改造された内燃機関がメルセデスベンツで開発されてきた。それらは現在、世界中で購入することができる。また、ここ何年か、いくつかのタクシー会社は、なたね油メチルエステルのような再生可能資源からの燃料で動く自動車をうまく使っている。

その間、ナトリウムニッケル塩素ベースの高容量バッテリーを持った排出ガスの出ない電気自動車が、高いレベルで開発された。そして、すでに試験的トライアルに入ろうとしている。

これらの成功にもかかわらず、ダイムラーベンツはこれらの方法の推進は、主に公共輸送のようなニッチマーケット(すきま市場)に適していると考えている。逆に、研究者は燃料電池は、大市場において成功する可能性があると信じている。

なぜそんなに楽観的なのであろうか。その答えは、従来のバッテリー駆動の電気自動車や内燃機関に対する燃料電池の利点にある。

 

利点1:低排出ガス

水素の電気化学反応によって発生する排気は水蒸気だけである。水素動力自動車は文字通りゼロエミッション車である。将来、水素をタンクに貯蔵する代わりにメタノールから車載上で水素を作ることが可能である。

メタノールはガソリンのようなもので水素とは異なり特別な貯蔵容器は必要ない。

 

 

 

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