表11-3の5種類について、自然貯蔵貯蔵試験、燃料分析試験を行い着色剤の経年品質変化を調査した。1ppmで1年間の貯蔵試験を行った結果、4種類の添加剤については、着色剤自体の安定性、容器等への影響は問題ないことがわかった。AY73が他の4種類に対し吸光度の変化が若干大きかった。
さらに、文献調査による安全性及び自然貯蔵試験結果から2種類(AB9、AR52)を選択し、発がん性がないことを確認するため変異原性試験を行った。いずれの添加剤とも変異原性試験結果は陰性であり、発がん性はないことが確認された。
2種類(AB9、AR52)の添加剤のうち、AR52は青味桃色でありガソリン(オレンジ系)に近いこと及び価格が高いこと、AB9は食品添加物でありまた(財)日本自動車研究所にて実際に変異原性試験を行った結果、問題ないという試験結果が出ていることから、AB9を用いて排出ガス試験及び実車による市内走行試験等の実証試験を行った。
シャシーダイナモメーターにおいて、10・15モード排出ガス試験を行った結果、着色剤を添加したメタノールと添加していないメタノールの排出ガスはほとんど変化せず、着色剤が排出ガスに与える影響はないことがわかった。
その後、約10ヶ月間の市内走行試験を行った。燃料への添加量がわずか1ppmということもあり、排出ガス、燃料系部品、エンジン等に与える着色剤の影響は全く認められなかった。
行った調査、試験の結果概要を表8-1にまとめた。
以上の結果、メタノール燃料への着色剤としては、調査した範囲内ではAB9が最も適していると考えられる。
着色剤科学名:Acid Blue(通称:AB9)
化学式:C32H36N2O9S3・2Na
分子量:792.86
濃度:1ppm 注) weight/volume