これら地域の魅力や個性を生かすことで「なぎさ海道」の目指す「自然環境保全と持続可能な開発」の可能性を秘めているとみることができます。しかし、地域独自の資源の広域的な知名度の低さや個別の活動がつながりを持っていないこと、官官・官民間の連携が極めて少ないこと等により、広がりとつながりによる新たな“ムーブメント”にまでは至っていません。
私たちは、この現状を踏まえて、これらの地域個性を生かし「なぎさ海道」実現への提案として二つの大きな方向性を提示しました。ひとつは、地域で進められているハード整備をソフトー体型の「なぎさ海道スタイル」ともいうべきものに展開するための『産・宮・学の連携による利用と整備のネットワーク』です。もうひとつは、当地域で盛んな市民活動を更に広げるとともに、市民一人一人の持つ豊かな生活体験を生かした多様な参加をめざす『関わりがい・楽しみから生まれる市民の連携』です。
今回の調査の成果が、対象地域のみならず類似条件を持つ「なぎさ海道」の各地域にとつて参考になる情報提供と、新たな連携の実現の一助となることを願っています。それは近未来において、人と自然が共生し合える持続可能な環境が、日常生活圏に広がっていくために、「なぎさ海道」に関わる人々が認識し、守るべき要件を示唆するものになるに違いありません。
そして、これらの調査を踏まえ、大阪湾ベイエリアの各地が「なぎさ海道」の持つ共通の価値観でつながりつつ、それぞれの地域個性を生かした新たな海辺環境の可能性発見への“ムーブメント”が生まれることを期待するものです。
最後になりましたが、調査に当たり各地でご協力いただいた方々に厚くお礼申し上げます。
平成10年3月
「なぎさ海道」基礎調査 委員会
(財)大阪湾ベイエリア開発推進機構
■「なぎさ海道」基礎調査 委員会・委員(あいうえお順・敬称略)
加藤恵正 神戸商科大学 教授
川端直志 株式会社ケイ・プランナーズ 代表
白石修章 運輸省第三港湾建設局 大阪湾整備調整官(広域連携推進室長)(前任 北澤壮介)
中瀬 勲 姫路工業大学 教授
辻井 博 兵庫県知事公至 次席審議官
羽原 伸 建設省近畿地方建設局 企画調査官
安井誠人 経済企画庁総合計画局 計画官
鷲尾圭司 林崎漁業協同組合 企画研究室長