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ないと食べられないのです。それに対して関西ものは延縄ですから、釣り針があるだけで後は動けます。お腹に入った餌はこなれます。それを3日から1週間、生け簀で泳がせるので臭みが抜けて、白焼きにしても蒸しアナゴにしてもおいしい。それに煮つめたタレをつけた焼きアナゴが非常にさっぱりと味わっていただけるものになるのです。

活け越し・締めるといった手続きをやるのは基本的にはタイ、ヒラメ、スズキ、カレイなどの白身の魚ですが、これから魚屋さんで明石という文字が出たら、果たしてどんな扱いをしているのかを見ていただくと、面白さが分かってくると思います。そういう見方が、魚との付き合い方、明石という町の魅力、あるいは須磨くらいまで含めた明石海峡周辺で捕れる魚の活かし方につながってくると思います。そういうことを「なぎさ」を楽しむ時の一助にしていただけたら幸いです。

 

●質疑応答

【質問】丸アジと真アジの味の差は?

【回答】真アジは秋が深まるほど脂がのっておいしくなりますが、初夏に卵を産むので夏は味が落ちます。逆に丸アジは産卵期が早いので、初夏から夏にかけてさっぱりした味になります。

魚のおいしい時期を旬と言いますが、10日単位、或いは、大潮と大潮の間の15日ひとしおといった潮の前線が通過するごとに魚の種類が変わるからです。5月の連休明けに真タイ、サワラ、その後サバ、半潮遅れて丸アジが6月の終わり頃にやって来ます。真アジは8月後半から9月です。

アジは大阪湾で回遊しますが、明石の海で釣った場合と泉佐野の巻き網で捕った場合とで、同じ群でもその後の運命が変わります。明石に来た魚は、活け越して刺身やたたきのネタになるが、泉佐野のはアジフライになります。バケツ1杯いくらになるか1匹いくらになるかは捕られ方で変わるのです。しかし、それぞれの地域に結びついた捕り方と食べ方があるので、一概にどちらがいいとは言えません。

 

【質問】イカナゴのくぎ煮について?

【回答】この時期売っているイカナゴのくぎ煮は、保存のためアメ煮状です。くぎ煮の時期は3月で、イカナゴは6月から11月の終わりまでの半年間、砂に潜って夏眠しています。11月の終わりから顔を出して産卵し、お正月に孵った稚魚が3月頃には3cm位に成長します。鹿ノ瀬付近の卵は季節風に乗って大阪湾に広がり、泳ぐ力をつけた稚魚は明石海峡を目指して戻ってくるので3月後半の大潮の時の明石海峡の下が、最もイカナゴ流の盛んな所になります。港に水揚げされてから3時間以内に焚かないとおいしくありません。そういう意味で明石から神戸西半分がくぎ煮の好適地と言えます。

イカナゴは東北、北海道でも捕れますが、涼しいので砂に潜らず年中泳いでいるので30cm位の大きさのものも見られます。オオナゴとかメロウドとか言われています。現在海砂採取が問題になっている岡山、広島ではイカナゴが減少していますが、淡路島の周りと鹿ノ瀬では海砂採取が禁止されているため、イカナゴが守られています。くぎ煮は家庭での手作りが原則で、炊き方ででき上がりが随分違うので、贈る人の好みにあった仕上がりが可能となり、手間暇かけた贈り物ができます。魚文化のレベルの高さを物語る好例です。

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