さて、乗客の誘導が可能であるためには、乗車可能人数が過小な車両の近傍に乗車可能人数の過大な車両があればよい。逆に言えば、図2.1.2-4において、乗車可能人数が過小な車両の上下左右にある車両が同様に乗車可能人数が過小であれば、乗客を誘導できないことになる。この図からは、このように乗客を誘導できない車両はきわめて少ないことがわかる。例えば、乗車可能人数が10人以下の車両を取り囲む8つの車両の乗車可能人数がすべて10人以下である場合はない。また、同じく上下左右にある4つの車両の乗車可能人数がすべて10人以下である場合も4例(N8/2の3、8両目、R8/1の3両目、N9/1の10両目)だけである。なお、東陽町と茅場町についても同様に調査した結果、やはり乗客を誘導できない車両はきわめて少ない。
以上に述べたことより、調査対象とした路線では、非常に混雑した車両(混雑度250%以上)でも隣接する車両あるいは前後列車の同一車両へ乗客を誘導する余地がある。ただし、これは物理的な可能性があることを示しているだけであり、以下の事項は考慮されておらず、直ちに来客誘導により停車時分が短縮されることを意味するものではない。
・各扉の混雑度、降車人数は事前にわからない
・乗車可能人数が不足していても乗降時間が長いとはかぎらない
・降車人数も乗車人数も多い場合は乗車可能人数が多くても乗降時間は長くなる