日本財団 図書館


対応するため、政府は、高齢者が密集する既存の団地での集団的居住の概念を採用した。HDBの賃貸アパートには、28,800人の60歳以上の高齢者が住んでいて、そのうち半分近くはワンルームのアパートに住んでいた。これらの高齢者の多くは、ケアも支援もなしに一人で住んでいたが、高齢者がアパートで亡くなっても数日経たないとわからない、という事態も起きてしまった。これらの状況から、HDBと共同体開発省(MCD)による改善プロジェクトができ、援助が求められる中で高齢者が自立して住める様に生活の状態を改善されることになった。

 

このプロジェクトは、高齢の入居者が密集している理由から選択された、18ブロックのHDBのフンルームの賃貸アパートで構成されている。このアパートは、屋内および共通部分の廊下の手すり、大きめの明かりのスィッチ、押し上げ式レバーの付いた蛇口、軽量のアルミの窓、化粧室の床のタイルの張り替え、特殊警報システムの各ユニットへの配備を含む、「高齢者に優しい」新しい設備がついている。アパートの各ブロックには、ボランティアの福祉団体が運営する「高齢者活動センター」もある。センターの職員およびボランティアは、ブロック内の高齢者の福祉の世話をする。これには、高齢者への定期的訪問、警報システムの通報時の緊急援助の提供、高齢者の通院の付き添い、リクリエーションおよび食事サービスの提供が含まれる。

 

この様な計画で、高齢者は、馴染んだ環境に住みながら支援を受けることができ、そうでなければ高齢者向けホームに移住させなければならない高齢者の直面する新環境への適応という困難をなくすことができる。しかし、選ばれたブロックのみが改善されるだけなので、賃貸アパートに住む高齢者の約60%しかこの計画の恩恵を受けられないだろう。それに加えて、これらの高齢者に優しいアパートの一つに居住の申請するには、高齢者は、少なくとも5年間賃貸アパートを借りなければならず、少なくとももう一人の高齢者と一緒に申請しなければならない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION