日本財団 図書館


(2) 自立者向け集合住宅

(a) 退職者向け住宅

家族によるケアを強調する社会にとって、いくつかの支援サービスを受けながら自立した生活を好む高齢者向けの選択肢があまりないということは、それほど驚く事ではない。高齢者向けの住宅やナーシングホームの様な施設は不名誉であるとされ、施設という既存の選択肢は、高齢者やその子供のほとんどにとって「最後の手段」として考えられている。

ごく最近までは、もっと裕福で健康な高齢者のための、イギリスのシェルタード・ハウジングまたはアメリカの退職者向け住宅のような住宅はなかった。その様な住宅の草分けは、レンター・アヴェニューに最近完成した、2,000万Sドルの民間の擁護付き退職者向け住宅である。まだ、この退職者向け住宅の入居者はいない。おそらく、その様な概念がシンガポールでは珍しいことが理由と思われる。しかし、その様な住宅の需要への期待が、民間の開発業者の間では高まっている。少なくとも二つの退職者向け住宅プロジェクトが1998年までに整うと予想されている(ストレイト・タイムス、1997年10月11日)。

 

住宅開発庁(HDB)は、高齢者向け住宅問題を優先事項の1つと考えている。1997年11月、HDBは高齢者向けのワンルームのアパートの建設計画を発表した。狙いは55歳以上のHDBのアパートの所有者で、アパートの売却益が見込め、同時に子供の近くで、生活の便利さを簡単に入手できる設備のあるHDB団地の他の高齢者と一緒に住める人である(ストレイト・タイムス、1997年11月6日)。一方、この計画について、高齢者住宅への助成金、または、高齢者住宅プロジェクトへの優遇措置は、家族によるケアを勧める政策と矛盾するのではないか、という疑問の声も出ている。その一方で、これは、将来の高齢者の自立者向け集合住宅への要求の高まりに向けた傾向の変化に直面している政府の実際的な考え方を反映している。

(b) 集団的居住

しかし、高齢者向け住宅の新しい選択肢は、高齢者全員が入手でき、権利があるものではないかもしれない。例えば、HDBのワンルームのアパート計画では、高齢者が、現在HDBアパートの所有者であることが要求される。低所得層の高齢者の自立者向け集合住宅の需要に

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION