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もこれらの国以上になる日本では、アメリカ、スウェーデン並みの年金支給開始年齢は財政の健全性のために必要であろう。平均寿命の長さを誇り、高齢者の高い就業率の実績を持つ日本は、高齢者雇用支援を福祉政策の柱の一つとして重視すべきであろう。高齢者が若くなり、働いてくれれば、高齢化社会でも福祉財政は破綻しない。最近の政府や学者の、社会保障や財政の見通しは暗いものが多く、そのため高齢化社会のイメージも暗くなり、将来の年金制度の破綻を懸念して公的年金の信頼が薄れている。また高齢化が進行して保険料負担者に対する受給者の高齢者が増えると、これから社会保険料を負担する世代は今の中高年齢世代に比べて損をするとの論も聞かれる。しかし、年平均1〜2%以上の経済成長率を維持できれば(将来の世代は税金と社会保険料の負担率は今の二倍ほどに重くなるが)それにもかかわらずそれらの負担を引き物価上昇分を引いた後の実質所得は現在の世代よりは多くなる。それに個人資産も社会資産も豊かになる。公的年金と医療保険の膨張は抑制するが、高齢者介護サービスと働く女性の社会的支援は改善される。こうしたかたちで福祉改善と経済の安定成長の両立を実現することがこれからの経済福祉政策の課題である。

 

(3) 分権的参加型福祉

 

高齢者・障害者福祉政策、働く女性の立場に立った保育所作りなどこれから発展する福祉政策の多くや、環境づくり、ごみ処理等も基礎自治体レベルで行なわれる。それだけに政策主体も財源も分権化が必要である。高齢者医療と福祉サービスを総合化するには北欧のエーデル改革の場合のように両方を基礎自治体レベルで行なうことが必要であろう。最近の国際的な福祉国家改革論議では市場化・福祉ミックス化の主張と同時に分権化と情報公開・住民参加の主張が目立つが、現在の政府の福祉改革には分権化と参加のための改革が不十分である。

市場化とインフォーマル部門の活用、プロダクティブな福祉、それに分権化と市民参加が、これからの福祉と共生のまちづくりのキイワードとなるであろう。

 

 

 

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