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(2) 生活の質:アメニティと共生のまちづくり

 

横浜市も神奈川県も住みやすい魅力的な地域であると見做されているが、豊かさと便利性以外の社会指標でみると、必ずしも誇るべきものばかりではない。生活の質の指標は、ニーズの段階に応じて(1)基礎的ニーズの安全・健康、(2)環境の質、(3)精神的文化的ニーズの生きがい等、に分類されるが(丸尾直美『総合政策論』有斐閣、1993年)。総合健康指標とも言うべき平均寿命に関しては1990年の指標しかないが、神奈川県、横浜ともに高いほうであり、かつて神奈川県は男性の寿命で日本一になったこともある。しかし、近年では沖縄の平均寿命が抜きん出ている。とくに女性ではそうである。神奈川県の交通事故死亡率は都道府県中最も低い。

環境の質に関しては大都市では住宅事情と通勤距離では水準が低い。神奈川県は持ち家率と一戸当り床面積では東京、大阪に次いで低いが新築住宅床面積はそれほど低くない。都市公園面積(人口当り)も和歌山県、徳島県に次いで狭い。住宅と公園緑地のスペースの狭さは地価の高い大都市としては止むを得ない面もあるが、それだけに工夫が必要である。ドイツ、北欧などのヨーロッパの都市では都市面積の3分の1くらいは自然と公園のために保全することを目途としているという。豊かな緑ときれいな水辺は、歴史的文化的環境と並ぶ環境アメニティの基本的構成要素であり、その保全と改善が環境の魅力となる。1960年代の横浜は22%が山林であったが、10年程前に作成された横浜21世紀計画では横浜市の山林面積が8%台に低下する見通しになっていた。東京23区の山林面積は23区の全面積の5%程度であると推定されているが、横浜市は山林プラス公園面積の保全と拡大に努力すべきである。「熱帯雨林と自然林を保全せよ」と発展途上国に呼びかけても、自国の地元の緑が失われているようでは、説得力を欠く。横浜の環境アメニティのためにも地球環境保全のためにも、自然環境を保全し、人間と自然が共生するまちづくりを行うべきであろう。

歴史的文化的環境づくりについても同様のことが言える。世の中が近代化され、画一化が進むほど歴史的建造物と文化的多様性は環境の潤いと魅力にとって一層大切になる。古きよきものと近代的な新しいものが共生することも魅力ある都市の条件である。さらには若者と高齢者が、いわゆる健常者と障害者が共生し、高齢者も障害者も子供も安心して出てこられる環境を作ることも都市計画の目標として重視されるべきである。自然と人間の共生、古きよ

 

 

 

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