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く関わっている。そして、子どもとの関係が付随してくる。(3)その移動行動には高齢者自身の自発的積極性が窺える。6割以上の人々が自分(および自分たち)の意志・意向で移動しており、移動後の評価(自己評価)も、移動してよかったと思う人が約8割と高い割合を占めている。(4)しかし、どこからどこへという移動動向をはじめ、転入、転出、市内転居の規模・割合は各都市で異なり、その家族関係、移動理由等についてみても各都市各地区ごとに特性がある。

今回の札幌市調査についてみると、(1)高齢移動者数の転入、転出、市内転居は3:2:9の割合であり、市内転居が(他都市と比べて)異常に多い。また、高齢人口の転入超は年間で1,000人を超えると推計され、前年度の市総人口の社会増(転入超)の1割強に相当する。(2)高齢移動者数全体の男:女比は、ほぼ1:2である。高齢移動者の年齢別では前期:後期高齢者の割合が、男は2:1であるが、女は20:17で女性の後期高齢者の移動が極めて多い。(3)全高齢移動者の有配偶率は約5割。但し、転入した女性の後期高齢者は84%が単身である。移動後の家族(世帯)形態は、前と変わらなかった人は約7割、子どもと一緒(近居も含め)になった人は、転入者では約1割であった。(4)移動理由としては、保健・医療・福祉サービスと生活の利便性が大きく挙げられている。(5)移動後の本人評価については、良かったが6割強、悪くなったが約1割、その他は変わらずと答えている。これらの調査研究は大都市におけるものではあるが、大都市に限らず、高齢者移動が地域社会にとって極めて重要な意味を持つことは理解されよう。この調査は、すでに社会の実情に照らしてマスコミ等の社会的関心を集めはじめている。がしかし、肝腎の地方自治体等の認識が未だ低い状況にあることも実状である。

 

エイジング総合研究センター「高齢人口移動調査研究委員会」

 

 

 

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