日本財団 図書館


3. バタフライの科学―泳法について一

 

(財)日本水泳連盟医・科学委員会・科学技術部・奈良教育大学助教授  若吉 浩二

 

1. プル動作について

 

1) プルパターン

 

バタフライのプルパターン(図1−A)は,“キーホール・プルパターン”と呼ばれる。キーホール(Key hole)とはカギ穴のことで,その形は図1−Bのようになる。筆者が学生達に指導する時には,キーホールよりも,「前方後円墳のように」と説明した方が,理解されやすい(図1−C)。これらの“キーホール・プルパターン”や“前方後円墳・プルパターン”の表現は,身体に対する指先の軌跡を表現したことになる。

では,水に対して,表現するならばどうなるか。身体は水中を移動しているので,図2に示すように,指先の軌跡は,数字の“8”を書くようになる。これは,クロールのプルパターンによく似ている。ただし,クロールは左右のプル動作が交互に行われるので,手の軌跡は,身体の進行方向に沿った形となる。バタフライの場合は,両手同時に左右対称の動きとなるので,やや外側を向くことになる。

 

033-1.gif

 

033-2.gif

 

2) 3方向からみたプル動作

 

図3に,3方向からみたバタフライのプルパターンを示す。Aは前方から,Bは側方から,そしてCは下方向からの指先の軌跡を描写している。また,面白いことに,側方からの指先の軌跡をみる限り,クロールのそれとほとんど同じであることがわかる。

Maglischo4)は,水中でのストローク動作を,アウト・スウィープ局面(1−2),イン・スウィープ局面(2−3),そしてアップ・スウィープ局面(3−4)の3つの局面に大きく分類している。

?@ アウト・スウィープ局面(No.1−2)

この局面は,手のエントリーから水をキャッチするまでの局面をいう。手の入水は,肩幅ぐらいの広さがよい。そして,前方・外側方向に,円を描くようにして,腕を伸ばしながら,水をとらえるようにする。また,手の平は,やや外側を向けた状態で行わなければならない。とらえた水を,次のイン・スウィープ局面につなげるため,肘を高い位置で保ちながら,手で,しっかりと水をおさえる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION