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村した人達であり、これまでに感染の機会が少なかったためであると思われる。ただ健康手帳保有者だけをみても一昨年の38.4%に比し、28.6%と減少傾向がみられており、これまでの衛生教育と村の診療所に供与した駆虫剤を有効に使用した成果によるものと判断される。特に蛔虫陽性者は前回に全員が陰性であったが、今回は首都から帰村した1名のみが陽性であった。これまでの報告にも述べているが、蛔虫卵陽性者はバンギーなどの都市部にのみからしか認められていないので、今後このバンザ村での蔓延を防ぐべく、その感染経路などを含めた説明を村民に伝えると同時に、村の診療所の看護士に今後の注意に対する指導を行った。

以下、各蠕虫症について、厚層塗抹法による成績について述べることとする。

 

 a) 釣虫症

 

首都バンギー地区のウワンゴ診療所、ジャングル内のバンザ村の何れにおいても寄生蠕虫疾患のうちで最も高率に見いだされたのが鉤虫症である。ウワンゴ診療所では10.8%が鉤虫卵陽性で、蠕虫卵陽性者の約半数が鉤虫陽性であった。その陽性率は一昨年の13.7%と大差は認められていない。このウワンゴ診療所は昨年度から看護±1名、検査技師3名が増員され、現在は看護±3名と衛生検査技師6名が勤務しており、週に1回は医師の診察がある。その他付設の産院には5名の助産婦が勤務しており、比較的恵まれたところである。バイキ地区バンザ村は村内に診療所があって、看護±1名、検査技師1名が常駐している。これらの医療従事者が村民に対する衛生教育を行っている故か、一昨年度に38.4%であった鉤虫陽性者が今回は15.0%と減少していた。ただ今回は日程の関係で最も鉤虫に感染の機会の多い男子成人の受診者が少なかったこともあり、この成績のみで判断するのは早計であると思われる。結局今回の厚層塗抹法による調査の成績でも829名中91名(11.0%)が鉤虫卵陽性と蠕虫症の中では最も高率であった。陽性者に対してはコンバントリンの投与を行ったが、鉤虫症対策としては雨期と乾期の変わり目の年2回の投薬が好ましい。

 

 b) 蛔虫症

 

蛔虫感染者はバンギー地区のウワンゴからは厚層塗抹法で789名中58名(7.4%)の陽性者が検出され、一昨年度の6.4%など過去の成績とほぼ同様であった。バンザ村では3年前にバンギーから帰村した12名で虫卵陽性が認められ、一昨年度は厚層塗抹法では全員が陰性、MGL集卵法で初受診者から1名(0.7%)の虫卵数の少ない陽性者が検出されたが、今回は首都から帰村した1名(2.5%)のみから虫卵が検出された。蛔虫卵の陽性者に対してもヨンバントリンの投与を行った。

 

 c) 鞭虫症

 

一昨年度はウワンゴ地区では249名の検査で1名の鞭虫感染者も認められなかったが、今回はこのウワンゴ地区のみで789名中3名(0.4%)の虫卵陽性者が見いだされた。またバンザ

 

 

 

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