ま と め
本年度の調査の結果、Malabo 地区での小学校児童の感染率が他の2地区と比べてかなり高いことが示された。同地区では、住宅の密集地と小学校を結ぶ道沿いに中間宿主貝の生息地が存在していることが、これまでの調査で明らかとなっている。この地区は、Naujan湖に隣接して水はけが悪いという地形上の特徴を有している。したがって、雨期など降水量の多い時季には決まって道が浸水状態になることから、小学校の児童は登下校のたびに繰り返して感染していることが予想された。一方、San Pedro および San Narciso 地区では、小学校は住宅密集地の近くに位置しており、中間宿主貝の生息地のごく近辺に居住する児童を除き、感染の機会は比較的少ないと考えられる。
かつての日本でも、本症は“地方病”と称され、中間宿主であるミヤイリガイが生息するごく限られた地域でのみ流行があった。今回の調査地として選定した Malabo、San Pedro および San Narciso の各地区は、互いに近い位置にありながら、感染貝の生息地域と住民の生活域との関わり合いの程度の違いによって、小学校児童および各種保虫宿主の感染率にも大きな差がみられ、風土病的な性質を垣間見る結果となった。これらの地域において本症を撲滅するには、今後大規模なコントロール対策、とりわけ中間宿主貝対策が必要である。その実施に当たっては、Malabo 地区のように中間宿主貝の生息地域と住宅密集地が近接している地区を優先し、小学生の血清疫学的調査を中心にしてその効果を評価していくことが望ましいと考えられた。