日本財団 図書館


2) 伝播指数(transmission index)の算出

1995年度の調査時と同様に、糞便検査の結果から Pesigan et al.(1958)の方法に倣って、ヒ卜および各種保虫宿主の伝播指数を算出した。これは、各種の保虫宿主が本症の伝播にどの程度関与しているのかを数値化して比較の便宜を図るものである。

表4に示したように、1995年度の調査時に伝播指数が高値を示したヒトおよびイヌは、本年度の調査でも高い値を示し、本症の伝播に重要な役割を果たしていることが再確認された。

 

010-1.gif

 

2. ミンドロ島の小学校児童における血清疫学調査

 

オリエンタル・ミンドロの3つの村、すなわち San Pedro、San Narciso および Malaboの小学校児童から採血した。まず手指を消毒用のアルコール綿で清拭したのち、ランセット穿刺により微量の血液をキャピラリーチューブ内に採取した。血液は遠心して血清を分離した後防腐剤としてアジ化ナトリウムを加えて4℃で保存し、帰国時に保冷しながら獨協医科大学に持ち帰った。

血清は200倍に希釈し、日本住血吸虫の虫卵抗原を用いたELISA法(Matsuda et al.,1984)によって抗体価(IgG および IgM クラス)を測定し、吸光度0.2以上を陽性と判定した。正常血清として、獨協医科大学学生の検体を用いて対照とした。

IgGクラス抗体価によって判定した結果、Malabo 地区では他の2地区と比べてかなり高い陽性率を示した(図2、表5)。一方、同一の検体をIgMクラス抗体価によって判定した結果では、全体的に陽性率は10%以下とかなり低くなり、各地区間での差も不明瞭となった。

日本住血吸虫症の血清疫学調査を行う場合、小学校の児童は以下に示すような点で有用である。まず、定期的に学校に集まるので検体を効率良く回収することが出来ると同時に、正確な名簿の作製が可能である。次に、行動範囲が比較的限られるため、村レベルの区域内の感染状況をより正確に反映する。成人ではその行動範囲も広く、居住している近辺の感染状

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION