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?. ま と め

 

現在、フィリピンの寄生虫協力はいずれも住血吸虫症を対象としており、1981年に発足したボホール島の住血吸虫症の根絶を最終目標とするプロジェクトと、1994年に開始したミンドロ島(オリエンタル・ミンドロ)の本症の調査と対策を目指すものとがある。

オリエンタル・ミンドロでは住血吸虫症の疫学、とりわけ(1)本症の保虫宿主哺乳動物の感染状況の調査、(2)学童と一般住民の血清疫学、そして(3)超音波検査像のmorbidity studyへの応用について調査が行われた。

日本を含めて、これまでに住血吸虫症コントロールのベースラインデータに保虫宿主の哺乳動物の感染状況を取り入れた例はない。オリエンタル・ミンドロでは数年後に中間宿主貝対策と全虫卵陽性者の治療を骨子とするコントロール・プロジェクトの開始を予定しており、これが独創的でかつユニークなベースラインになることが期待される。一方、罹患率を異にする4村落の住民を対象に超音波検査を実施し、年齢、肝炎抗体陽性率、一般肝機能検査、住血吸虫抗体値などとの関連について検討した結果、超音波検査像によって流行地の住民の感染の度合いを評価できるかも知れない可能性が示唆された。

ボホール島では1996年10月に発見されたSan Vicente の Kanggabok creek では1997年2月以降は3ヶ月間隔で1998年3月まで殺貝作業が継続実施されており、既に1997年8月以来中間宿主貝の生存は認められていない。また、新感染者1例の発見によって1997年8月に見出された San Roque の Omaguin palawan ?に隣接する面積約600平方米の seepages と pocketsにおいても1997年8月以来、3ケ月間隔で殺貝が行われている。

1998年3月にはさらに San Roque の Bunaos palawan に隣接する boggy と、San Vicente の Apao palawanにつながる湿地に貝の生息が認められ、直ちに生息地の除草と殺貝剤の散布を行った。San Jose においても貝検索を試みたが、貝は採集されなかった。感染者が発見されている他の村落においても引き続き徹底的な貝検索を実施する必要がある。

Casilion creek は財団の資金援助によって1995年に約100mがコンクリートライン化されたが、これがボホール島選出の下院議員 Enrico B.Aumento氏の知るところとなって30万ペソ(約120万日本円)が拠出され、本年度になってさらに数百m延長された。これは財団の事業がその地域の政治と行政を motivate し、好結果をもたらしたものとして注目される。

 

1996年5月に定年退職した Dr.Bayani Blas の後任として保健省住血吸虫症対策局長に着任したDr.Benefico Ducusin が住血吸虫症対策の研修のため、11月27日に来日した。博士は11月28日に笹川記念保健協力財団に表敬訪問後、東大医科学研究所、国立感染症研究所、順天堂大学医学部、目黒寄生虫館、および獨協医科大学において、とくに住血吸虫症の新しい血清診断法について研修を受けた。12月2日と3日は山梨県甲府盆地の旧住血吸虫症流行地を視察し、韮崎市内では中間宿主貝を採集した。また、山梨県公害衛生研究所では本症の撲滅対策の詳細について講義を受け、12月7日に離日、帰国した。

 

 

 

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