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府が与える補助金(subventsiia)とは異なる(29)。下位の政府を財政援助するだけではなく、下位政府間の貧富の差を是正する再配分的な機能を果たすのがトランスフェルトであると言える。スヴェルドロフスク州の特徴は、ほんらい連邦とリージョンの間に機能していたトランスフェルト制を、リージョンと地方自治体(地区、市)の間にも導入したことである。その結果として、州都エカテリンブルクの税収入のかなりの部分が州内のほかの貧しい自治体へ自動的に「移転」されることになり、それが同市市長と州知事ロッセリの間の鋭い対立の原因となっている(30)。ナズドラチェンコは、本稿第4節(3)で触れるようにロッセリとは異なる国家編成の方法論を採っていることもあって域内トランスフェルトは導入しなかったが、連邦政府から受け取ったトランスフェルトの自治体への配分に際しては、豊かな自治体とみなされているウラジオストク市には1ルーブルも渡さない方針をとっている。その結果、ウラジオストク市は、連邦税、リージョン税を上納するが、連邦からのトランスフェルトは受け取れない「ドナー」となるのである。ちなみに、沿海地方34市・地区のうち「ドナー」とされているのは、ウラジオストク市とナホトカ市のみである。

この状況を不満とする復職後のチェレプコーフ市長は、教育・医療に関する支出は連邦やクライからの移転財源によって賄われるべきであるという前提に立ち、教育・医療関連の歳出をゼロとする驚くべき1997年度予算を編成した(31)。このため同市においては、教員、医療労働者への給料未払い問題が深刻化した(32)。この反面、チェレプコーフは、1998年3月29日に予定される市長選挙に向け、道路補修(33)と年金の払い足し(34)には大盤振る舞いしている。市庁は、「今年度予算では道路と年金、来年度予算では福祉と教育」といった常識外れの予算編成方法を採用しているのである(もちろん、1998年度予算において福祉・教育が重視されるか否かは未知数である)。こうした非常識が通用するのは、1993年の市ソビエト解散以来、ウラジオストク市には議会が存在していないからである(後述)。

リージョン中心市とそれ以外の地域との対立の第二の側面は、政治文化である。エカテリンブルク市もウラジオストク市も多数の高等教育施設とロシア科学アカデミー支部(前者はウラル文部、後者は極東支部)を抱える学術・科学の中心である。ほんらい、エカテリンブルク、ましてやウラジオストク程度の都市が科学アカデミー支部を有していること自体、過分な措置であるが、知的人材を地理的に分散させるソ連政府の方針により、そうなったのである。こうして、エカテリンブルクとウラジオストクは過分なインテリ人口を抱え込むことになった。また、これはエカテリンブルクのインテリに顕著な傾向だが、モスクワやサンクトペテルブルクのインテリに比肩したいという願望が強いが故に、両市のインテリ以上

 

 

 

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