日本財団 図書館


? 最後に、別の機会に詳しく紹介したい)が、ウドムルト共和国における国家権力機関の体系についての法律(1996.4.17)の合憲性が審査された事件(1997.1.24)については、改めて判決にもとづいて紹介しておくことにしよう(『憲法裁』97-1)。

96年4月17日付の「ウドムルト共和国における国家権力機関の体系について」のウドムルト共和国の法律によって、ウドムルト憲法の定める行政・領域的単位(地区および市)ならびに市区の国家権力の代表機関および執行機関の形成が定められた。そこで、地方自治を実現する公共団体の地域とみなされたのは、村、町などに限られた。

憲法裁判所に対する請求は、この法律の規定およびそこから派生する地区、市区の国家権力の代表機関および執行機関の形成手続、権限および活動の組織を定めた具体的な一連の条項は、構成主体の権限外にあり、市、地区における国家権力の代表機関および執行機関を創設することはできず、構成主体の執行機関の下部機構を設置することができるにすぎず、憲法に定める地方自治の実現に対する市民の権利を侵害し、国家権力機関の体系および地方自治の組織の一般原則の制定は、ロシア連邦と構成主体の共同管轄事項に含まれていることから、ロシア憲法の定める権力分立原則および連邦の国家権力機関と構成主体の国家権力機関のあいだの権限区分の原則に違反しているとみなしている。

憲法裁判所は、以下のように判じている。

連邦憲法に定めるロシア国家の連邦的性質からすれば、連邦構造は連邦の管轄に、構成主体の領域構造は構成主体の管轄に含まれる。したがって、ウドムルトの独自の領域構造の問題は、自ら決定することができ、それは本質的に憲法的意義をもつものである。

しかし、ウドムルトでは、その行政・領域単位として共和国の構成に直接に入る地区および共和国直轄の市を位置づけ、その他のレベルの領域単位とされる地区と同等レベルの市、地区における町、村、共和国直轄市の町および市区などは、こうした地位をもたない。そのため、こうした領域単位の国家権力機関の代表機関および執行機関は組織されず、このレベルにおける公権力は、国家権力機関の体系に含まれない地方自治体またはその機関がこれを行使するのである。この規定は、連邦憲法に適合しない。

また、問題の法律は、村および町において地区代議員ソビエトは地区の行政長官の提案により村ソビエトおよび町の長を任命すると定めているが、これは地方自治体およびその機関の独立を侵し、固有の権限を奪うだけでなく、文字どおりこうした居住地における独立した国家権力機関の創設をもたらすものとなる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION