日本財団 図書館


第2章 ロシアにおける地方制度・地方自治の確立と憲法裁判

 

1 はじめに

 

ロシアで、昨年9月に新たに「ロシア連邦における地方自治の財政原則に関する法律」(「地方自治財政法」)が制定された。

この法律の制定を受けて、昨年9月30日に開催されたロシア連邦地方自治評議会において、エリツィン大統領は、「地方自治の組織の一般原則に関する法律」(以下、「連邦地方自治法」または単に「地方自治法」とする)そのものについて、ヨーロッパ自治憲章にふれつつ、高い評価を加えながらも、この2年間に十分な形で実現されたわけではなく、その主要な原因が財政問題にあったことを明らかにした。中小規模の市町村はとくに厳しく、大都市の大部分でもその予算の半分以上を上から与えられているというのである。たとえば、マリー・エル、ウドムルトなどの共和国やカムチャツカ、リペツクなどの州では、歳入は歳出の10%以下にとどまっている。

この会議の席で、第一副首相のチュバイスは、インフレが98年度に5〜7%に抑止されれば、地方自治体の財政基盤も好転するであろうと期待を述べている(1997年10月1日付「ロシア新聞」)。

それよりも前に開催された『国家と法』誌(ロシア科学アカデミー国家・法研究所発行)の円卓会議(1)でも、地方自治法制定で重要な役割を果たしたシリーヴァは、地方自治の実現にとつての根本問題は財政にあるが、「金をくれ、自治の経済的基盤を与えてくれ、そうすれば投票する」といったずるい態度ではだめなんだ、自治体自身の努力が不可欠で、現段階の地方自治は経済改革の核心なんだと力説している。地方自治体の財政問題は、新しい法律の紹介を兼ねて、改めて検討の機会をもつことにしたい。

また、今年のはじめには、「地方勤務」に関する法律が制定された。選挙や議会の任命によらない地方自治体の職員の職務にかかわる原則を定めたものである。連邦地方自治法を加えて、地方自治3法の成立がなったといってよい。

こうして、ロシアは新たな地方自治体の財政原則と自治体勤務法制を打ち立てることによって、地方自治の実現への新たな地歩を築こうという局面を迎えたといえる。この背景には、長い間、地方自治体の首長や議会の選挙がなかなか進まなかった状況が、この1〜2年にそれなりに変化し、地方自治体がそれなりの体制を整えてきたことをあげることができる。

しかし、ロシアの地方制度と地方自治をめぐる問題は、全体としては整備されつ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION