イ 「国の設立する一の事業主体」と地方公共団体の関係
筑波研究学園都市の場合、事業推進のために設置された研究学園都市建設推進本部には、地元茨城県知事をはじめ地元地方公共団体の首長は構成員になっていない。
他方、報告は「都市づくりに関する企画立案、……面的開発事業及び公共公益施設整備事業については、国の設立する一の事業主体が一元的に行う」として「国又は国の設立する事業主体が事業を行うに当たっては、地元地方公共団体とも十分協議、調整を図りつつ、必要に応じ、その協力を得ながら事業を行うこととする」と、地元地方公共団体との関係を重視している。ここでも、地元の府県や市町村をどのように事業推進組織に組み入れていくかを検討しておく必要があろう。
(3)地元住民の意向の反映
ア 報告は、「新首都づくりは、第一義的には国の責任のもとに実施されるべき性格のプロジェクトであるが、一方で移転先の地元の立場や国民全体の声を忘れてはならない。このため、地元の意見との調整や第三者による客観的な意見の聴取が十分に行われつつ進められることが望ましい。」として「具体的には、例えば、都市建設の進め方について助言を行う有識者による委員会を設置する方法、新首都づくりに関する公聴会の開催やモニター制度の活用等により国民の声を反映させる方法、国と地元の地方公共団体による協議会を設置する方法などが考えられる。」としている。
新首都建設は、建設地において、当該地域が持っていた地域特性を大きく変容させる可能性が強い。地元の住民にとっては、この点が大きな問題であると考えられる。また、新首都におけるいわゆる新住民と旧住民との間で利害の衝突が生じることも考えられる。これらを勘案した場合、地元住民の意向が計画段階を含め、新首都建設過程で十分反映されるようにしておくことが必要である。
イ なお、新首都建設の計画策定段階において、地元住民の意向を反映させることは重要であるが、地元住民の意向は、基礎的地方公共団体である市町村または広域的地方公共団体である府県がこれを把握し、これらを通