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ことに照らせば、首都機能移転は分権を徹底的に進めるためのよい手段となるだろう。

 

・日本において、制度の変化は現状を維持している様々な圧力団体の力の均衡が崩れなければ不可能であり、そのような変化を起こさせるためには、外国からの外圧や、首都機能移転のような大きなハード面での変化が必要である。

 

・首都機能移転により、物理的、心理的な東京一極集中を相当程度解決できると考える。移転先新都市は、国民的にも世界的にも関心の高い魅力ある都市とし、経済成長だけでなく、文化も伸ばし平和を重んじ、人口問題や環境問題を考える21世紀の日本を象徴する都市を目指したい。

 

・現在の東京は、物理的には手直しできないほどの限界状態にある。大地震に見舞われたらその被害は図りしれない。国家の危機管理の面からも、首都機能移転は避けられない国家の緊急課題。

(2)首都機能移転に慎重な論調について

 

・首都機能移転の具体化に向けた推進を急ぐことなく、国民の間で十分に議論される必要がある。

今、優先すべき課題は、首都機能移転ではなく、地方分権.規制緩和である。地方分権.規制緩和を大胆に実施し、中央省庁がスリムになった段階で、なおも移転が必要であるという声があれば、改めて検討しても遅くはないのではないか。

新都市に移るとされている60万人が、すべて東京から移転をしたとしても、東京の過密緩和にはほとんど効果が無いのではないか。

災害対応力の向上のためには、首都機能の情報バックアップ体制の整備を急がなければならない。

 

・首都機能移転を行っても、結局、新首都と東京との二重構造になり、また、二重投資となり効率が悪い。さらに、一極集中の解消策としても効果は薄い。

首都機能移転による混雑解消や地方分権への効果は薄く、移転の根拠も貧弱であり、日本の財政を考えると消費税引き上げ5年分の無駄遣いになる。

 

・首都機能の「場所」にこだわる考えは、情報通信技術がめざましい進歩をとげつつある現代の社会では、アナクロニズムと言わざるをえない。首都機能移転の考えも時代遅れである。

 

・日本は歴史的に見ても中央集権国家。歴史的に遷都が行われたときは、新しい政治理念、新しい政治をしたいという意欲があったが、今の日本はそのような状況ではない。

 

 

 

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