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4 パブリック・コミュニケーションと創造的合意形成

ここまでの議論で明らかになったことは、人々の《創造的合意形成能力》が社会システムの自己編成能力の核心だということである。創造的合意形成の創造性の源泉は《協働的コミュニケーション》にある。この創造性は、専門の知識・経験を有効に再編成する人間の創造的思考能力と思考を創造に向けて協働させるコミュニケーション能力から創発する。協働の成否は思考の柔軟性とコミュニケーションのしなやかさに大きく依存している。したがって、この話し合いでは、さまざまな束縛から解放された奔放な発想と思いつきを実効あるアイデアに練り上げる丹念な協力が要請される。このような協働的コミュニケーションは本来少人数でなければできない。しかし、組織体が大規模であることが決定的障害になるわけではない。大規模であることには、専門の知識・経験に優れた人材を広く調達できることや、政策案の策定を複数の少人数チームで競い合うことが可能なことなど、利点さえある。問題があるとすれば、それは、コミュニケーションの創造的・生産的機能を充分に発揮させる社会的工夫の不足である。この点については、後述する。

組織体がいくら潜在的な創造的合意形成能力をもっていたとしても、制度によって規制されていたり、資源の乏しさに制約されていれば、潜在能力の発現が制約されてしまう。制度・資源の束縛をこえるような政策案は発想の射程外におかれてしまう。さらに重要なことは、すでに人材の資質に関して論じたように、創造的合意形成能力もまた経験・学習によって培われ発展するものだということである。制度及び財政資源・使途の束縛が強すぎると、発想も経験・学習の機会も制限されてしまう。そのため、創造的合意形成能力の発展そのものが阻まれる。分権的地方行財政制度は、地域社会の創造的合意形成能力を涵養する制度基盤である。分権化は、地域社会の創造的合意形成を豊かな《地域社会づくり》に向けて発揮させる改革でなければならないし、また、人々をその方向に動機づける改革でなければならない。本稿が前半で強調したのはこのことである。

さて、公共的諸決定において創造的合意が形成されるには、《パブリック・コミュニケーション》に関わる社会的工夫が必要である。創造的合意を創出する《協働的コミュニケーション》は確かに少人数による奔放で丹念な話し合いを必要とする。しかし、このこと自体は大規模組織体の創造的合意形成を阻む絶対的障害ではない。例えば、わが

 

 

 

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