日本財団 図書館


地方分権推進委員会は今後の内政の主要課題が《地域社会づくり》であることをかなり意識して検討を進めてきた。このことは評価されてよい。また、機関委任事務を廃止することによって自治体の主体性を確立することを目指したことは、国・地方関係の画期的転換を象徴するものだといってよい。しかしながら、地域社会づくりを志向した分権化は、国・地方という二分法によって国から地方へと権限を移すだけでなく、基礎自治体の充実に焦点をあてた分権化を目指す必要がある。基礎自治体をどのような重層構造の中に位置づけるかについては、国・都道府県・市町村という現行制度以外にも、連邦制や道州制などの選択肢がある。推進委員会の案は、現行の重層構造を維持した分権化を採択した。さらなる将来に別の重層制への移行があるとしても、改革の実現可能性からみればこの選択が妥当であろう。ともあれ、どのような重層制であろうとも、生活場である地域社会を人々のウェル・ビーイングに向けて編成する責務を負うのは基礎自治体である。このことに変わりはない。そうであれば、基礎自治体の充実は、重層制のヴァリエーションを超えて追求すべきテーマである。基礎自治体が自己編成力に欠けていれば《地域社会づくり》の実効は上がらない。この点からみると、現在の分権化は基礎自治体の在り方に関してまだ検討を尽くしていないように思われる。特に、自己編成力に関する本格的議論はほとんどなされていない。そこで以下では、その手掛かりとなることを願って、基礎自治体の自己編成力に関する試論を述べてみたい。

分権化によって自治体の自由度が拡大したとしても、それだけで豊かな《地域社会づくり》が大きく前進するわけではない。自由があっても、力がなくては自由を生かすことはできない。さらに、自由も力も備えていたとしても、自治体がその自由と力を豊かな地域社会づくりに向けて発揮するという保証があるわけではない。自由と力を地域社会づくりに向けて発揮させる制度環境が整っていなければ、自治体行政は放縦に流れる。分権的制度に問われるのは、自治体に自己編成力をもたせ、それを住民生活の豊かさを実現する地城社会システムの編成に向けて発揮させる仕組みである。そうでなければ、改革は失敗する。

 

2 財源調整の理念と自己編成力

自治体の自己編成力は基本的に権限・財源・人的資源に規定される。分権化によって権

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION