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FORUM Em. Bridge'96趣旨

 

高度情報化社会とは、すなわち個人、組織、国家、何れにしても、関り合いがますます広く、そして深くなっていくことを意味する。ボーダーレス、グローバル等という言葉がしきりに言われることは、まさにそのことを物語るものであろう。

 

そうした流れの中で、日本人の意識の中には明治以来、公益、公共などといった言葉の中の「公」という字の意味するものとして、それは国と深くかかわるものとして認識されてきた。

 

一方、市民社会(civil society)とは、すなわち多元価値社会であることを前提としていることは、少なくとも欧米の多くの国々では当然と受け止められており、従って市民のための公益とは、必ずしも国益と同じではないことも有り得る。この場合、これからの日本において、公益のための活動を目的とする社会セクターを考えるときには様々の問題にぶつかる筈である。

 

"Deregulation"(規制撤廃)という言葉を、日本では″規制緩和″と訳して使用しているが、ここに、はしなくも日米間での認識の違いを読み取ることができる。日本における社会セクターの活動を真に実効あるものとするためには、こうした基本認識の違いの相互確認から、まずはじめなければならないのではなかろうか。しかも、それは単に比較文化的な観点の現状認識に留まることなく、それを乗り越えて、世界的な方策をたててゆかねばならない。

今回招へいするダニエル・ベル博士は、かねて"public household"という極めてユニークな考えを世に問うてこられた。日本の社会セクターの活動のあるべき姿を探求するためにも、ベル博士の卓越した理念から多くの示唆を得るであろう。

 

FORUM Em. Bridgeの目的が、様々の目に見えない橋をかけることにあるのは、趣意書にも述べたとおりである。本フォーラムを通して、日本の社会セクターの活動が充実し、世界の中で大きな貢献を果たす役割を担ってゆきたい。

 

FORUM Em. Bridge '96 代表世話人

林 雄二郎

 

 

 

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