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間」という立場から、今何をすべきかということを考えられる人の存在が必須です。しかも、そのような発案に対して、ある時は公的資金、ある時は私的資金と、これまた柔軟に対応する社会システムが必要です。

それにはまず、柔軟な頭と体を持つ人を育てなければなりません。残念ながら教育の現状はそこからは遠いものになっているので、根本的な変革が必要でしょう。先日、「ノーベル賞的な研究ができる人の素質」をノーベル賞受賞者らと話し合った際に出てきた「条件」は三つありました。第一は、よそから何を言われてもやれるパイオニア的な人。第二は、リスクを恐れないギャンブル精神のある人、第三は身近な人の中から適切なモデルを見つけてその人をまねできる人です。ノンプロフイットなど新しい分野に出ていく人材も、まさにそのような人に違いありません。

一方、柔軟な社会の前提として、「性善説」に基づいた制度づくりも重要です。誤解を避けるために確認しておきますが、人間はすべて善人だなどと言っているのではありません。悪い人は必ずいるし、誰の中にも悪はある。だからと言って「性悪説」で制度を作り、社会を硬直化させたためのマイナスの方が大きいに決まっています(悪い人は、「性悪説」で作った制度でも巧みにすり抜けるものですし)。すべての制度を「性善説」で作ることは難しいし、そうである必要はないかもしれません。しかし、少なくとも教育、研究、文化活動などは、そうでなければダイナミズムを持てません。

公と私の間にあるたくさんの可能性を生かす。高度知識社会はそのような社会だと、私は考えます。

 

資本家ソロスの「公人」哲学

土野繁樹(TBSブリタニカ国際担当取締役)

 

官僚は公僕とも呼ばれる。英語のpublic servantの直訳であろう。しかし、官尊民卑の悪しき伝統を引きずる日本では、官僚はpublic masterすなわち「お上」である。

思えば、日本は序列に異常に敏感な社会である。例えば日本の男が名刺交換をする際、瞬時に相手の社会的地位が上か下かを見極めなければならない。これができなければ日本人失格である。カンピュータで自分の地

 

 

 

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