日本財団 図書館


快適さを保持するための衣、食、住の文化環境である。第二は工業技術の発達、特に通信と交通が地球的規模となって、普通の人々が簡単に異文化圏に接しうるようになった。そこで生ずる文化の差異によるカルチャー・ショックに適応する課題解決を、一般に国際化と称している。

第三は、情報化、国際化、高齢化の融合・統合が一挙に登場する超環境(サイバースペース)である。そこでは第二の工業化社会のコンピュータ、通信技術が爆発的に普及し、統合されて、人間のパートナーとしてネットワークシステムが登場する。ネットワークは縦の特定分野の拡大にとどまらず、横の分野である金融、福祉、教育、娯楽、スポーツなど、すべての分野で根源的で未経験の状況を広く形成させている。店舗、商取引、決済、一雇用の条件や形態なども抜本的に変わる。従来の、人間だけが、同じ組織・集団の構成員としての意識、共通のメンバーであるという「公」の団結が失われて、ネットワークと一緒に論じなければならない。一方、ネットワークを通じて組織的に趣味、考え方の似たもののグループが形成できる点では、全く新しい。

ひるがえって、日本語と印欧語系の差について考えてみる。日本語は人間同士が、人間の自然の目(テレビでなく)で見える範囲、そして自然の音声が届く空間を前提として成立した言語である。したがって、どんな時刻でも誰が話しているのか判るので、英語のように、IやYOUに相当する主語は必ずしも必要とされない。初めに情景や舞台ありきから出現した言語が日本語である。

サイバースペース、超環境になると、実際の空間の扉や窓から、見える景色が決まっていない。次々と「私」個人の知識や興味によって、特定の私空間がその実空間に居る人々とは別に、同格に導入できるようになる(インターネットのウインドウのように)。したがって「公」の部分と「私」が融合し、結論として「私」が優先する形になる場合もある。空間に関してはまだ話が易しい。文化的基盤、集団の共通の常識といったものは物理的なものではなく知識・情報に関係するので、不特定多数での共有は至難に近い。

刻々と変わるスペース内グループに対しての「公」と「私」とが、どのようになっていくか。「公」と「私」との考え方・定義が高度情報社会、サイバースペ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION