資料5.
東京港での死体整理作業について
油流出事故では、個体の死と同時に個体群の死、にも目を向けなければならない。油汚染海鳥被害委員会では、海岸でのセンサスを含めての資料の収集と、被害の記録、被害規模の推定をおもな目的とし、とくに事故後の個体群の回復に焦点を当てて、さまざまな活動を行ってきた。
その第一段階として、死亡した個体をすべて一ヵ所に集めてもらうよう環境庁に依頼し、一括管理とデータベース化をはかった。
今回の事故では、死体は基本的に各府県から冷凍で東京港野鳥公園に送られた。しかし、一部の県については、東京港に送らずに独自に管理しているところなどもある。被害鳥の総数は約1300羽であり、台帳の記載数は約600羽であるから、およそ半分が台帳に記されていることになる。すべての死体が台帳に記載されることが望ましいが、日本の法律では野生生物は無主物であるため、国や機関が一括管理することは元々難しい。
環境庁発表による被害鳥の一時集計結果も掲載した(環境庁ホームベージのデータより加工)。鳥種や数については、台帳に記されているように、その後になって変更されたものもある。
東京港野鳥公園では、各死体の油の付着状態を、大きく5段階にわけて記録するとともに、油が付着した状態での重さをはかり、そして、すべての死体に「494AKT10」というように、通し番号、各府県の記号、各府県の通し番号、をふり、ダイモテープとプラスチックラベルでタグをつけていった。死体は、(財)ホシザキグリーン財団寄贈による業務用大型冷凍庫にて、−20℃で保管された。
日本ウミスズメ類研究会では、(財)日本船舶振興会(日本財団)による「ロシア船籍タンカー重油流出事故における鳥類への被害記録整備支援」(事業番号609)助成を受けて、作業マニュアルや死体台帳フォーマットの作成などを行った。こうした作業がスムーズにできた背景には、研究会のメンバーの方々をはじめ、東京港野鳥公園のグリーンボランテイアの皆さんや、(財)日本野鳥の会の職員の皆さんの働きによるところが大きい。
「死体台帳」には、その後の移送先についてもわかるようにした。種名で明らかに間違っているものについては直すようにしたが、この時点で本格的な識別は行っていない。
死体は(財)日本鳥類保護連盟が環境庁の委託を受けて、現在、それぞれ研究される方々に配分された。そして、種の識別はもちろん、栄養分析など、さまざまな学術研究がなされることとなっている。
台帳は順次更新され、その成果の一部は被害推定のために役立てられる。東京港の作業で作成した死体台帳(暫定版)とともに、海鳥に関する部分のフローチャート、そして東京港で使用したマニュアルも併せて掲載する。