
6. 小 括
−Uターン者の有効活用の現状を整理する−
最後にUターン者の有効活用の現状を整理すると、まずUターン者の採用方針について、おおむね新規採用者は「特別扱いなし」、中途採用者は「Uターン者志向」という図式になっており、企業は中途採用者に対して即戦力として大きな期待を持っていることがうかがえる。
即戦力として求められている中途採用者の仕事分野は、「技術・研究職」「外交・営業職」と専門性の高い分野に集中しており、しかも企業は中途採用者に対して「特定分野の専門・技術能力」を求めていることから、こうした傾向を裏づけている。営業・技術系の仕事分野を求める傾向は、金属・機械・電子・電機、対事業所サービス、卸・商社・小売業等でとりわけ顕著にみられる。このことは逆に言うと、こうした人材が慢性的に不足しており、有効な人材活用が政策的に求められているを物語っている。この「特定分野の専門・技術能力」を求める傾向は、中途採用者の中でもUターン者に対する期待は大きく、とりわけ事務職に、高度な能力と幅広い能力を求めていることが特徴的である。
応募する中途採用者の募集に際して、企業は当然「専門分野で能力を発揮できる人材」を要件としており、Uターン者にも同様の要件を提示している。ただし、応募者の年齢は両者に関係なく、個別にケース・バイ・ケースで対応しているのが特徴である。Uターンの有効活用の現状として、企業がUターン者に期待を持って積極的に取り組んでいるものの、実際には考えと行動が一致していないことが見受けられる。
(田口和雄)
第5節 Uターン者への処遇
企業はUターン者に対してどのような処遇を行っているのだろうか。本節ではUターン者に対する処遇を、?@賃金水準格付け、?A採用時の優遇措置、?B労働条件、の3つの面から探ってみたい。
1. 中途採用の賃金水準格付け
(1)中途採用者
中途採用の賃金水準の格付けについて、図表3-32に示されたように、6割弱(58.0%)の企業は賃金水準を「同等経歴者と同水準」としている一方、賃金水準を増加している企業はほとんどみられなかった(「前勤務先の3割増し以上」0.3%、「前勤務先の2割増し」0.4%、「前勤務先の1割増し」1.9%)。
「同等経歴者と同水準」とする傾向は製造業よりも非製造業で強く、その中でも対事業所サービスでは7割弱に達している。しかしながら、製造業では「同等経歴者より1割低め」とする企業が5社に1社みられ、規模別でも同様の傾向が100人以上の企業でみられる。なお、所在地(市)別では、所在地に明確な関係はみられない。
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