
本調査研究の概要
1. 目的 周知のごとく日本の人口移動は、戦後高度成長における産業の集積や規模の利益と相まった相乗効果等によって、巨大都市への転入超過が甚だしく、東京一極集中を加速させてきた。むろんこの間「新産業都市計画」「全国総合開発計画」「列島改造計画」「新全国総合開発計画」「定住圏構想」など幾多の均衡発展・地方分散に関する経済政策が打ち出されてはきた。交通・通信網の全国ネットワークによって、1962年に40万人であった東京圏への人口転入超過が、1975〜1980年には年間5〜8万人まで減少したのであるが、それは必ずしも十分な成果をあげることができなかった。 1980年代前半から後半にかけて、経済のソフト化(情報化・サービス経済化)や金融の国際化が引き金になって、再び東京圏への超過流入が減少したものの、1990年以降の流入は低下し続け、1994年には始めて流出が流入を上回った。東京圏の人口転出超過が今後も続くかどうかは不透明だか、世界一の物価高、深刻な住宅問題などを回避し、より快適な生活環境を求めて地方都市に移動・定住するトレンドは前進しつつある。 こうした東京一極集中の是正・変調にまつわるUターンや地域への定着等といった動向の持続は、経済成長重視から個人生活の質的拡充を実現しようとする多様なニーズの高まりと共に、新たな産業および就労の場をいかに確保しうるかにかかっている。同時に円滑な労働移動は、労働力の需給ミスマッチ解消にとっても重要な課題となっている。 そこで本調査研究では、これまでの経済・産業の構造変動とそれに対応した地域間労働移動のトレンド変化について、実態や諸問題を産業・技能の空洞化問題への対応をも視野におきながら追跡する。そして、地域産業の活性化をめぐる地域・職場への定着促進ならびに新たな雇用機会の創出に向けての今後の在り方などを考察し、その成果を地域雇用政策及び雇用開発に役立てようとする。 2. 調査研究の遂行に関する計画 (1) 計画の内容 ?@ 労働力の地域間移動に関する歴史的変遷・構造について、統計データおよび各種調査研究等の文献サーベイにより、かかるトレンド変化を概括する。 ?A 地域産業の構造変化とそこにおける企業経営に関する対応を把握し、蓄積された知的熟練等の労働力の有効活用への取組みを把握する。 ?B 新規学卒者、中途採用者等の地域間移動(Uターン等)および職場・地域への定着と、そこにおける職業生活設計に関する意識を調査する。
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