II.ミャンマー連邦の現況
(1)政治・社会
民政移管に向けての具体的な展望をSLORK(国家法秩序回復評議会)が明らかにしないため、NLD(国民民主連盟)を代表とする民主化勢力との対立は依然として続いている。また、米国、EU、国連は決定力を欠きながらも制裁、勧告を繰り返しており、SLORK非難の国際世論が高まっている。こうした国際世論の監視の下、SLORKは民主化問題をめぐる有効な打開策を打ち出せず、政治的混迷を長期化させている。しかしながらSLORK政権下ミャンマー内政上、最大の問題であった反政府武装組織との和平については16のうち15の少数民族反政府組織との和平を達成し、97年に実現するであろうASEANの加盟を契機としてより柔軟な国家運営への転換がなされることが期待される。
(2)経済
92年度からの経済4ケ年計画成功を引続き農業に根ざした堅実な経済の運営、体制移行が行われている。96年度上半期は8%のGDP成長率を達成した。
造成を進めている工業団地、新コンテナバースも97年度以降逐次運用開始となる見込みで課題の産業育成、工業化に貢献すると考えられるが、貿易赤字の拡大が深刻化しつつあり財政赤字の一層の削減と併せて、短期的な経済安定化の為の努力が必要である。
また外国投資の最大の阻害要因である二重為替制度是正もFEC(外貨兌換券)の導入により着実に成果をあげつつある。今後は製造業投資を本格化させる為に、電力・港湾設備を中心としたインフラ整備、輸出加工区の設置、投資優遇措置の見直し等が急務とされる。
(3)今後の見通し
ミャンマーは豊富な天然資源、低廉で勤勉な労働力、人口4,500万人を擁する市場規模など多くの特徴を持つ有望な新興投資先として注目されている。
しかし、インフラの未整備は甚だしいものがあり、先進国、国際機関からの経済援助が停止している現状では、製造業が本格的に進出できるまでにはまだかなりの時間がかかると考えられ、直接投資に関する限り、現行の資源、観光部門が中心の時代がしばらく続くであろう。
一方、GDPの50%以上を占める農業部門は灌漑面積の拡大による乾期作の急増を背景に米の生産・輸出が著しく伸びている他、豆類などの輸出用農産物の増産も図られており、順調な発展が期待できる。新5ヶ年経済計画での力点も農業に置かれている。
開放経済の順調な進展とASEANのサポートを前提として、経済は今後も高い成長率を維持するだろう。一方で慢性的な財政赤字、価格の自由化、輸入品価格の上昇などから、インフレは引続き高水準で推移する見込みである。
国際収支は、98年からタイヘの天然ガス輸出が開始される予定で、外貨獲得源