IV.視察後記
IV-1視察後記
作業船に視点をおいて
株式会社 谷村建設 常務取締役新潟支店長 青木幸男 この度欧州の浮体構造物等の調査に参加する機会を得、欧州の作業船の実状を見るのを楽しみにしていた。と言うのは、米国および東南アジア(マレーシア、シンガポール)には作業船の調査を主に訪れたことがあり、これらの国の作業船の現状と今回の欧州の作業船の状況と比較してみたいと言う気持ちがあった。 米国ではニューヨーク港における世界最大級のホッパーサクションドレジャーに乗船する機会と、メリーランド州のHart-Miller人工島の工事現場を見学することができた。また、シンガポールではチャンギ東海岸埋立工事現場を訪れた。いずれも、国および州の大プロジェクトである。 これらのプロジェクトにはそれぞれの目的にあった大型の作業船および作業機械が活躍していたが、浚渫船の大型化特にホッパーサクションドレジャーには驚愕するばかりである。 今回は調査目的が違うが、大型起重機船に乗船する機会と石油掘削用のプラットフォームの運搬据付技術を説明していただいて、これで、世界の作業船の現状を垣間見たことになり、十分初期の目的は達成されたと思っている。 これらのプロジェクトに使用する作業船について、私見を述べさせていただければ、 1)北海の石油掘削のような国家の大型プロジェクトがあれば大型作業船を所有しても十分採算にあうし、また、それに伴って作業船の技術開発も進められる。 2)大型プロジェクトを計画する場合、既存の作業船に合わせ規模を小さくするか、また、分割施工するか、あるいは、大型プロジェクトに合わせて大型作業船を開発するのどちらかと思われるが、北海の石油掘削のような大型プロジェクトはどうも後者のようである。 3)HEEREMACあるいはGUSTOのような海洋工事およびエンジニアリング業者は世界を視野において活躍しているので大型作業船の稼働率も高い。 4)したがって、大型作業船の専用岸壁も所有出来るほど採算に合う。 と思われる。 また、訪問先のI.H.Cでは造船所の中を見学できたが、丁渡ベルギー向けの大型ホッパーサクションドッレジャー(18,000cm3、40,000T)が建造されていた。世界のホッパーサクションドレジャーの70%がI.H.Cで建造されているとのことである。 これを我が国に目を転じてみると、これだけの大型作業船の保有状況は皆無である。国内には海洋大型プロジェクトは漁業補償や、いろんな規制ありでなかなか育たないし、あっても規模が小さいため、大型作業船を保有しても採算に合わないため、大型作業船を作ろうとする意欲がない。従って、造船所における作業船技術は大きく伸びてこないと思われる。 米国や欧州の作業船技術に負けないためにも、海洋大型プロジェクトを創出し、いろんな作業船を開発したいものである。
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