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2.水中ハンマー 1)、2)、3)、4)、5)

(1)概要
我が国において、杭打ち作業は、一般土木・建築工事ではよく使われる工種であるが、海洋工事に限定すると、その使用頻度は少なくなる。そして、杭打ちを水中で行った実積は非常に少なく、ヤットコ打設か、気中打設できる長い杭を打設し、所定位置で水中切断する方法が採られていた。そして、東京湾横断道路工事において、施工現場の上空の空域制限高との関係で、初めて、水中油圧ハンマー(MHU-700)による水面下約22mまでの直接打設(φ2,000mm、L=51m)が行われている。国内では、市街地近辺での工事が多く、騒音・振動の問題より、「打込み工法」は制約を受け、「埋込み工法」が主流となっている。
そして、油圧式ハンマーはディーゼルハンマーや気動ハンマーに比較して、騒音・振動は低く一時期脚光を受けたが、絶対的なものではなく、市街地での使用は打込み工法の後退と共に減少しているが、海上専用機種は寵用されているようである。
一方、海外においては、海上油田の開発の高まりの中で、プラットホーム建設等の海洋工事において、油圧ハンマーによる水中施工が数多く見い出される。しかも、最近は、大水深域での施工となり、IHC, Holland社の油圧ハンマーは最大水深900mの実績(2,000m迄可能)があるとのことである。
我が国においても、沖合人工島、海上空港、浮体都市構想、浮体橘梁や浮体プラント等の大規模海洋構造物の構築構想が多く在り、今後、水中での杭の直打設機会が増加するものと予想される。従って、ここでは、本工事で使用されると思われる水中ハンマーについて述べることとする。

 

(2)大水深域での施工
水深が深くなると、潜水夫による作業は不可能となるため、音響装置を用いたモニタリングによる状況把握と無人で行う操作(navigation)の工夫が重要となる。
杭打ちについて考えると、まず、
1)所定位置への設置・・・・・位置決め
2)倒れの調整
3)杭の打設
4)杭の支持力の確認

 

が必要であり、深海ではこれらの作業がリモートコントロールで行われることとなる。例えば、1)2)の作業について、文献5)ではあやつり人形(Puppet System)方式(図-4.2.1)を紹介している。この方式は杭+ハンマーによる自重が海底の地耐力より大きいかどうか、即ち、杭が地中に自重で貫入するかどうかで、分類し、貫入する場合がCASE-1で、所定位置に杭先端を貫入させ、杭頭側に付けたあやつり糸で、杭先端の横方向の土圧抵抗を利用して、杭の傾きを調整する考えである。また、貫入しないCASE-2は杭先端側に付加の錘を付けると共に杭頭側に天秤を設け、天秤の両端を介して錘に繋いだ糸をあやつる。この時、天秤位置で角折れした糸張力は水平分力を生じるため、この分力を利用して杭の倒れを調整するものである。この方法は杭とハンマーを一体化させ、余分な偏心力が生じない状態が保てることが必要となる。

 

 

 

 

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