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IV今後の技術開発の方向

 

IV-1 作業船の開発

 

1.はじめに

今後のわが国のウオーターフロント利用開発は、地形・地質的条件や環境保全の観点から、自然環境の厳しい沖合への大水深海域に移行せざるを得ない状況になっていくものと考えられ、港湾・海洋工事は大変厳しい条件下での建設工事を行わなければならなくなってきております。これら厳しい作業環境の中で従事する作業船は、耐波浪性と大水深等への対応が必要不可欠であります。そして、効率化、省力化を追求し、安全且つ確実に施工できることが必要であると考えます。

 

2.作業船の技術開発の推移

わが国における作業船の開発過程は、1960年代の急激な経済の発展による高度成長時代においては、物流の急増に伴い、港湾施設の増強と近代化が急務であった。また、工業生産増強のための工業用地の埋立造成が増加した。したがって、この時代の作業船の主役は、浚渫船を中心としたもので、船体構造や作業機構という作業船の基本技術が次々開発されてきた。そして、これらの技術を基盤に作業船は、急速に大型化し、高能率の作業舳が開発された。したがって、この時代の作業船の技術的発展の中心は、浚渫船、特にポンプ船であった。
1970年代に入ると、わが国の経済は高度成長から安定成長へと大きく転換した。これにともない、作業船の発展の陰りが生じ、特に、ポンプ浚渫船への需要は激減した。
1980年代中頃に入り、大型国家プロジェクトとして関西国際空港、本州四国連絡橋、東京湾横断道路などの建設ニーズに対応する作業船として、地盤改良船、揚土船、抑航式土運船等が数多く建造された。特に地盤改良船や土運船の技術的特徴は、高い施工精度を必要とすることから、パーソナルコンピューターを搭載した船位制御システムの採用等、ハイテク化が始まったことである。
このように、港湾工事における作業船の主役はかっての浚渫船から構造物工事用作業船に代わり、作業船は多様化の時代に入った。また、わが国におけるエレトロニクス技術の目覚ましい発展のもとに、パーソナルコンピューターを利用した自動化システムの開発など、作業船のメカトロ化という次世代作業船への開発技術の芽が育ってき始めた。
そして、1980年代後半から現在においては、国際化、都市化、情報化が進展し、成熟化杜会への道を進むなか、社会のニーズはあらゆる分野で高度化、多様化しつつある。
このような状況の中、現在、コンピューターを利用した作業船技術のメカトロ化、制御技術の高質化、水中作業機械のロボット化など、作業船のハイテク化が技術開発の主流となってきている。
特に最近建造された作業船には、最新鋭の施工管理システムと船体自動位置決め及び船体自動姿勢制御システムの採用などのハイテク化された装備が施されている。

 

3.今後の課題

21世紀に向けた沖合人工島や海上空港などの大型プロジェクトの計画が進められている。一方、海外に目を向ければ近隣の開発途上国における社会資本の整備(港湾整術等)

 

 

 

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