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(7)浮体プラント

浮体プラントは立地場所周辺に建造設備、要員などがない場合に、プラントを工場でモジュールとして製作し、現地まで曳航して設置するもので、ブラジルのパルププラント工場を建設するのに、日本でパルププラントとパワープラントをバージ上に建設して現地まで曳航して据え付けた事例をはじめ、インドネシア沖のLPGプラント、サウジアラビアの淡水化プラントなどの事例がある。
一方、わが国においても、人工密集地の安全性や公害対策の観点から、陸上での立地が困難になっているエネルギー関連施設の洋上立地の検討が進められており、発電プラントの構想が立てられており、内外の事例について紹介する。
?@浮体式石炭火力発電所
鋼材倶楽部などが提案しているもので、大きな電力需要が見込まれる大都市囲およびその周辺地域に、新たな発電所立地の困難さを解消するために、水深20m〜50mの沖合海域を防波堤で仕切り、波浪の穏やかな水域を造り、バージ式の発電船、貯炭船を係留して、防波堤内は土捨場に利用するもので、発電量は300万kwを計画している。
?A浮体式原子力発電所
アメリカのニュージャージー州アトランタ沖に計画されていたもので、都市近接地域での立地が困難なため、防波堤で囲った水域に115万kwのバージ搭載型プラントを係留するもので、1981年に完成予定であったが、オイルショックの影響で構想だけで計画延期となった。
?B浮体式下水処理施設
用地確保が困難な場所や、埋め立てによる用地造成も周辺環境に対する規制により多額の補償費などを要する場所に、工費も少なく短納期の施設を提供できる構想で、日本下水道事業団や造船各社から提案されている。
?C海底食料備蓄基地
石油備蓄と同様に食料の安定供給を目的として、食料備蓄に年間を通じて低温かつ温度変化の少ない海底を利用した備蓄構想がある。
備蓄基地は水深50m〜100m程度の海底に設置した容量3,000m3の備蓄タンク6基とコントロールタンクと海上搬出入基地、およびそれらを緒ぶ連絡通路により構成され、運搬船により搬入された米穀は、連絡通路のシュートにより各備蓄タンクに収納される。一方、搬出は連絡通路内のバケット式ベルトコンベアにより海上搬出基地に揚げられ運搬船に積み込まれる。約2万tの米穀を備蓄できる。
備蓄施設は、ドライドック内で下部のタンク群を建造して、平穏水域で中間部の連絡通路等を搭載した後に現地まで曳航して、あらかじめ構築しておいた海底基礎に設置する。
?D波力発電バージ
わが国のエネルギーは石油を中心とした化石燃料に大きく依存しており、しかも大半を輸入に頼っているため、資源の有効活用という面からも、無尽蔵近い自然エネルギーの利用が期待されている。わが国の海岸1mあたりの波のエネルギーは、全国平均で約10kwと推定され、波力を利用して圧縮空気でタービンを駆動して発電しようというもので、試験船が作られ大規模化の構想がある。

 

 

 

 

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