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(5)浮体僑梁

我が国でフローティングブリッジを適用する場合には、社会的および地理的背景を考慮すると、以下の利用形態が考えられる。
?@海上空港などの人工島へのアクセス
?A沖積層の堆積した軟弱地盤上の湾内横断道路
?B周辺海域の静穏性と親水性を期待してマリーナやリゾート施設への連絡道路
?C移設が容易なことから工事用などの仮設道路
一方、自然条件の制約から、台風の影響が大きいと考えられる水域、および津波の襲来が予想される水域は、避けることが望ましい。また、経済的理由により海外の事例より小規模なものも考えられる。
以上の条件を考慮して、技術的および経済的検討を行った結果によると、技術的には浮体形状の長さ500m、幅20m、吃水5mの大型の連続矩形浮体に対して、設計風速55m/sとした場合、たとえば波高H1/3=1.0mかつ周期T=6.0secでは左右揺れの振幅が0.5mと小さく、技術的に適用が可能である。しかし、波高H1/3=2.5mになると振幅が2.0mとなり、係留方法を改善する等の処置が必要となる。
経済的には、大水深または軟弱地盤のように水面から支持地盤までの深さが15m以上となると、従来の橋梁より有利となる可能性が高く、日本の比較的静穏な海域での適用が可能で、建設地点が大水深、軟弱地盤の場所であれば更に有利であるといえる。
具体的に浮体橋梁の検討を行ったものとして、大村湾架橋がある。大村湾は長崎県のほぼ中央に位置し、東西約15km、南北約25kmのほぼ楕円形をした穏やかな内海である。湾口部は水深30mを超え、最深部では54mであるが、湾内はほぼ水深16mで、干満差も少ない。大村湾架橋計画は長崎空港と長崎市と結ぶものであり、構造様式として、航空機の制限表面にかかりにくい、浮体形式およびトンネル案が検討されている。
大型の浮体橋を安全かつ経済的に建設するためには、以下に上げる課題を解決する必要がある。
?@浮体の動揺と係留方法
浮体橋の設計条件の設定に関して、波・風と動揺との関係を明らかにして、より高精度に浮体の動揺を評価する方法の開発が望まれており、合理的な係留方法と係留特性の信頼性の検証が必要である。一方、浮体橋を道路として利用する際に、車両の走行性と動揺制限値について明らかにする必要があり、浮体部と陸上部との接合に関して、潮位差および動揺量を考慮した、安全で耐久的かつ経済的な接合法の開発も望まれる。
?A地震の影響
浮体橋本体は地震の影響は小さいが、係留装置(ドルフィン、反力壁)は地盤上または地盤内に位置しており、これらが所定の耐震性を有しているだけでなく、係留装置を通じて浮体にも地震の影響が伝達されるので、考慮が必要である。
?B疲労特性・耐久性
海洋構造物と比べて耐用年数が長くなるため、波による繰返し作用によって生じる疲労は無視し得ない影響であり、本体および係留系を含めた疲労解析手法の確立と疲労強度に関するデータの蓄積が重要である。
供用後の維持管理については、メンテナンスフリーが望まれ、鋼製浮体において

 

 

 

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