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2.大規模浮休構造物の構想

(1)沖合人工島1)、2)、3)、4)

我が国は四面を海に囲まれ、大部分が急峻な山岳や丘陵で平野部の狭小な国である。このため古くより沿岸域を活用することにより経済社会の発展を遂げてきた。とくに近年では、世界的にも希な国土の高度利用が行われており、社会生活面においては、バブルが崩壊したとは言え、世界的に見れば異常に高い地価、窮屈な住居、生活環境の劣悪化等の様々な問題が生じている。
さらに最近の社会経済の高度化、成熟化に伴い、新しい利用空間として沿岸・海洋域に対する要請は多様化、高度化しつつある。物流、産業、生活に係る諸機能が調和よく導入され、相互にその機能が連携しあい、全体として高度な機能を発揮できる総合的な空間形成が必要になってきている。
我が国の国土は、4つの主島と約4,000の島嶼から成っているが、その面積は37.8万km2であり、世界の全陸地の400分の1に過ぎないが、200海里経済水域面積は国土面横の。約12倍の451万km2と広く、また、3万4,000kmに及ぶ長い海岸線に恵まれ、沿岸・海洋域の開発には大きなポテンシャルがあると言える。
現在、我が国沿岸の水深20m以浅の面積約310万haのうち約50%程度は既に港湾、海上交通、漁業、海洋性リクリエーション等の諸活動に利用されるとともに、産業・物流用地や公共施設・住宅用地としての埋立用地の造成等多様に利用されている。国土資源の乏しい我が国にとって沿岸域の活用は重要であるが、利用可能な沿岸域空間は限られており、社会生活の進展に伴って増大する空間の需要に応じていくためには、海域の特性に応じて沿岸域の計画的利用や複合的利用を進めていく必要がある。
我が国の沿岸域の空間創出は、従来から、専らと言ってよいほど埋立方式によって行われており、陸上土砂、浚渫土砂、廃棄物等を用いて新たな国土を創出してきた。東京湾を例にとると、江戸時代から埋立が進められ、とくに高度成長期には大規模な埋立が進行した。1960年以降の20年間に埋め立てられた土地の面積は、それ以前の江戸時代からの埋立面積の実に5倍にもなる。1960年代以降になると、浅海域での埋立による土地造成も飽和に近づき、水際線から外航船の航路が十分確保できる程度の離岸距離を持った人工島が多く見られるようになった。これは、既に高度に利用されている水際線と既存陸域の諸機能を維持しつつ、人工島による新たな土地と水際線を確保しようとするものである。これにより沿岸海域の高密度利用がさらに促進され、人工島により創出された水際線に、港湾施設を配備した素材製造型産業、石油コンビナート、コンテナ埠頭、発電所等が立地した。1970年代初頭に着工された扇島人工島や大黒埠頭等がその典型例である。また廃棄物処理場等陸域で忌避される施設の立地にもこうした人工島が利用されてきた。
現在では、さらに進んだ「沖合の人工島」の概念も、一般に認められるようになってきた。これは離岸距離の大きい人工島のことであって陸域からの確実な隔離性の確保と、既存の水際線と人工島との間に新しい特性を持った水域の創出を狙ったものである。陸域にあまり近づけたくない施設を建設したり、周辺海域を種々の用途に利用するのが目的である。
経済の成熟により、深い水域に人工島を建設する経済的負担に耐えられるようになったことや、建設技術の進歩が、沖合人工島を生み出した要因である。関西新空港人工島は埋立式の沖合人工島の代表例である。 沖合人工島は、計画の自由度が高いことから多様な機能が集積した付加価値の高い空間

 

 

 

 

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