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(4)海洋エネルギー関連施設

エネルギー関連施設は安全性および公害対策などの観点から洋上立地の検討が進められており、我が国においては石炭火力発電所に関するフィージビリティスタディがなされている。また、アメリカではニュージャージー沖に浮体式の原子力発電所の建設が計画されたが、オイルショックの影響で計画が延期されてた。計画によればこの発電プラントの周囲は混成堤によって囲まれ、泊地内の静穏が確保されるとともに、発電プラントを船舶等の衝突から保護する。
波力発電はクリーンエネルギーとして注目されている。イギリスがいち早く開発を始めたが、我が国でも研究が活発に行われている。イギリスの沿岸部では年間平均波パワーが50kw/mで世界でも最も波エネルギーが豊富である。我が国の沿岸部では、平均6kw/mと試算されているが、日本海側では冬期に20kw/m以上となる月もある。波力発電の方法は大別して空気タービン式と動揺式になる。実験船「海明」や波力発電ケーソン防波堤は空気タービン式である。現段階ではコストが高く商業用電源としては期待できないが、小規模なものは燈標の電源として実用化されている。

 

(5)浮防波堤

ポンツーン等を係留する浮防波堤は、内海や内湾などで小規模な防波堤として数多く用いられている。しかし、浮体規模にもよるが一般には長周期波に対しては透過率が高くて効果がないので、外洋の波から溝湾を防御するような第一線級の防波堤としてはあまり用いられてはいない。しかし、海水交換が期待できるので、漁港の防波堤、養殖用のいけすの消波装置などとして用いられている。港湾施設としては広島県福山港に建設されたものが最初である。
浮防波堤の使用例として、第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦に使用されたボンバードンが有名である。対岸距離100km、波高は4m以上が予測されていた。イギリス南岸での現地実験の成功に基づき、ノルマンディに曳航設置された。当初は浮防波堤としての機能を発揮していたが、設置2ケ月半後のしけで完全に破壊した。その後の建設事例の多くは湾内の波高の小さい水域にある。構造も多様で、軽量PCやフェロセメントなどのものもある1)、2)。我が国でも主として漁港用の防波堤として多く用いられている。浮防波堤の長所は、可搬性、透過性、一定の乾舷などである。しかし、浮体幅に比較して波長が長い、いわゆる長周期波に対しては透過率が大きく効果がない。また、高波浪に対しては、函体の動揺および係留力が大きくなり、係留装置の設計が困難になることがある。

 

a)漁港用RC製浮防波堤
瀬戸内海の愛媛県および広島県には、昭和25年頃からRC製の浮防波堤が建設されている3)。水深は10〜20mほどで、設計波高は1.0〜1.5mである。函体の寸法は多くのものがL(長さ)21m×B(幅)7m×D(高さ)4.5mの規格品である。水深にもよるが、当時の価格で約70万円/m(昭和45年当時)であった。しかし、毎年チェーン交換の維持費が必要とされている。また、台風等によるチェーン切断または取付部橋台の被災が過去数例報告されている。
昭和52年頃から、造船会社等がドックを利用してPCハイブリッド製などの函体の製造を始め、長さ20〜30m、幅5〜10m、高さ2〜4mのものが多数設置されている。

 

 

 

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