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I.概要編

1.調査概要

地球はその全表面積の70.8%が海洋で覆われる“水の惑星”である。海洋をさして、“母なる海”という形容がなされるが、事実、人類は海から生まれ、育まれたといって過言ではない。水産、工業、居住、海運、通商、資源開発の場として、人類は常に海との接触を保ち続けており、今後は益々その依存の度合いが高まってくるものと考えられる。
人類が、海洋のもつ空間、鉱物資源、生物資源、エネルギー資源などを有効に利用しようとする行為を、今日では海洋開発と称する。1960年に、J.F.ケネディが、『人類に残された課題は、宇宙と海洋とガンの征服である』と宣言して以来、欧米諸国はもとより、我が国においても積極的に海洋開発への取り組みがなされてきた。それ以後、海洋開発は主として、海洋の鉱物資源、とくに石油開発の分野で急速に進展してきた。いまや、水深1,000m余の海域から石油採掘がなされている。今日、海洋開発の方向は、海洋空間の有効利用に向けられてきている。埋立地、重力式構造物、杭式構造物、そして浮体構造物などの多種多様な構造物を、利用目的、水深、環境などに配慮し、調和させて、新たな国土を創造し、居住空間、商業空間、工業空間、交通空間などとして構成するものである。新たな国土の形成は、従前に増して大規模になり、立地場所は大水深、かつ海底地盤の条件が良くない海域になされる傾向である。
これまで、海洋開発に係わる技術開発は、石油開発の分野で、大水深を克服し、苛酷な気象・海象条件に耐え得る構造物を建造し、かつ安全に運営できるよう、調査、設計、施工、運営、維持管理などの分野で進められてきた。ジャケット構造物、大水深水中ハンマー、大型構造物の曳航、位置決め、設置技術などの多くは、石油開発の目的のために開発されたものではあるが、シーバースや人工島など、海洋空間の有効利用のための施設および構造物の建設にも活用されている。
この様な背景から、この度日本海上起重技術協会は、海洋開発の先進国である、欧州各国の調査を企画し、なかでも近年、浮体橋梁やテンションレグプラットフォーム(TLP)の開発にめざましい発展を遂げたノルウェー王国、および港湾・海洋工事に常に斬新な技術革新を果たしているオランダ王国において、技術開発の動向を調査することとした。なお調査においては、とくに大水深における施工法に焦点をあて、工法、作業船、施工機器について重点的に調査を実施した。
また、内外の浮体構造物の現況および今後の展望、浮体構造物の建設技術の現状、今後の技術開発の方向について調査を行った。本報告書は、この調査の成果を取りまとめたものである。

 

 

 

 

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