はじめに
自然塾は青少年育成のために活動しているもので、その目的とするところは、他の諸団体と少しも変わるところはありません。逞しい青少年の育成です。
ただ自然塾は、次の理念に基づきその方法手段を考え実施しているもので、育成の場を野外に求めキャンプを行っていますが、一般社会通念であるレジャーあるいはリフレッシュではないことに注意して欲しいのです。
自然塾の根本的な発想は、現在子どもたちにみられる問題を解決するため、我々人間の古里、つまり我々祖先が生活した場所に戻って、子どもたちだけの社会を作り、そこでの簡単な生活の中から
1)自然の恩恵、自然の偉大さ、尊厳と怖さ等、我々人間も自然界の一分子であることを悟り、自然と共に生きなければならない宿命にある生物である、とした敬虔な気持ちを感じ取ること。
2)集団(社会)、いいかえれば数多くの他の人間より受けている恩恵を知り、従ってその集団を維持するために必要な規律を守り、強調と協力の必要を悟り、自己中心的な考え方を戒めなければならないことを体験し、同時に遠い祖先の時代より現在に至る歴史の中で、集団が存在したために発達してきた文明の恩恵(つまり他人の恩恵)の有難さを認識させようとするものです。
3)もちろん運動は、特に生長期の青少年に欠くことのできない要素です。
運動によって身体各部の発達を促し、生涯を通じて恵まれた健康を保持し、逞しく目的に向かって生き抜かなければなりません。
以上の観点から、子どもたちに自由に自主的に野外で活動させねばなりません。
子どもたちが自分で発見し、感動を覚えて行動して体験となり体得するものです。
それが子どもたちの真の自信となり、また個性の発見へとつながってゆくものです。そのため、集団の規律を必要以上に要求し、あるいは自己防止に腐心する余り、私たち指導者(大人)の過度の介入は慎むべきです。
そうでなければ、現在子どもたちの欠点とされる「指示待ち」の姿勢から脱皮させることはできません。
確かに子どもたちは野外活動に対する知識も経験も少なく、実際上自力だけでは何事もはかどらず、とまどうばかりですから、必要最低の事項は教えなければなりません。(たとえば、火の起し方、炊事の方法、テントの扱い方等)
しかしながら、スケジュールの消化や結果を急ぎ求めて、過度に教えて子どもたちが自分で考え、決断して実行する課程において、このような「解答を先に教えてこれに従わせる」方法は、子どもたちに自信を得させる機会を与えない残念な結果になることに充分留意すべきです。
当惑して処置に困っている場合、ヒントを与え、あるいは誘導する発言をして、子どもたちに自分で「解答」を出させることです。
もし、子どもたちだけの能力では実行不可能と判断した場合、指導者は直ちに行動を起こし、解決しなければなりません。
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