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外注へ」)「機器導入による省力化・生産性の向上」などがあげられるが、工程面では元請や業種間の調整が必要となる等それぞれに困難な問題が多く、個別企業べースでのコスト低減努力には限界がある。

 

 

3.今後の課題と対応

 

(1)変革を求められる協力業界
プラザ合意('85年)を起点として始まった円高=ドル安の流れは、平成6年半ば日本企業の輸出採算ラインを大幅に割り込む1ドル=80円を突破するまで続いたことは記憶に新しい。このとめどない円高は国際競争力喪失への危機感を強めた日本企業を、一斉に、海外生産、資材の海外調達へと向かわせ、国内の産業空洞化を生み中小企業を苦況に陥れた。その後は緩やかな円安に向かいつつあるが、日本経済の構造変化は着実に進行しつつあり中小企業は苦しい局面が続いている。
造船業においてもこの円高の影響は甚大で、特に造船協力業は大幅な価格ダウンを余儀なくされるなど企業存立の瀬戸際といっても過言でない惨状に追い込まれたが、こうした業界を取り巻く経営環境の悪化・激変は、見方を変えれば、造船業のみならず日本経済とさらにそれを支える経済システムがよりグローバルな経済構造に組み込まれていくうえで避けられない必然の現象であったと捉えることができる。
世界の経済は国境を越えてグローバル化、国際化が急ピッチで進んでおり将に世界的な自由競争の時代を迎えつつある。造船業がかつて成長の原動力として日本経済の牽引役を果たしてきたことはまきれもない事実であるが、日本の経済全体が構造改革を迫られているように造船業もまた遅かれ早かれ根本的な構造変化に直面しなければならない時期を迎えていたということができる。
金融機関の相次ぐ破綻に象徴的に表れているが、戦後の日本経済の驚異的な発展を支えその潤滑機能を果たしてきた経済システムが、国際的な自由競争の到来とともにその役割を終えようとしているように、造船業界における元請・下請関係などの有り様を含めて日本の造船業や経済全体を支えてきた既成の様々なシステムが大きな変革の時期を迎えているとも考えられるわけで、当業界もまさにその渦中にあると考えてよい。
とはいえ、造船業が存在し続けるかぎり協力企業の存在もまた不可欠であり、先行き今以上に協力業への依存度が高まる可能性さえあるが、先端技術の導入、新技術の開発あるいはメガフロートなどの新規事業分野への進出等々元請の事業革新が進めば、協力企業に対する元請の二ーズも急速に変化していくことは必定であり、協力企業としての技術ポテンシャルの向上、コスト面での適切な対応等将来の協力企業に求められる課題や乗り越えなければならない多くのハードルが予想される。
現在はまだまだ従来の取引慣行が維持されているようにみえても、旧来の元請を頂点とした取引秩序やタテ系列の企業関係は徐々に崩れはじめており、将来的な造船業との関係においては技術力、コスト競争力等を含め企業としての総合力を備えた新しいパートナーシップが必要とされる時代が近づいており新たな業界秩序の構築と協力業界の事業革新が求められている。
(2)経営資源活用の効率化と情報化への対応
造船協力業と一口にいっても、実体は様々な業種、職種の集合体であり、企業規模も多様であれば、年々低下しつつある舶用比率をみてもわかるように造船業との関わり方も企業や地域、業態等によって、微妙な温度差があるのが実態であり、経當環境が間断なく急ピッチに変化し続ける中にあって、業界としてどのように対応していくかについて明確な答えを出すことは至難なことである。
ただ、造船産業が成熟化し業界全体で分け合うことのできるパイそのものに限界がある以上、従来とは異なった視点での経営効率化の追求や経営の方向転換が必要になっている。
当業界は、労働力の不足・高齢化、受注価格低下等個別企業レベルでは解決困難な多くの経営課題を抱えているが、人材や設備、多様な熟練技能・技術ノウハウ等業界全体が保有している経営資源は決して少なくない。これらの経営資源をどのような方法で効果的に活用していくかについて、現実的なプラン、道筋をにわかに具体化することは難しいが、企業相互の得意分野を活かした共同の技術や製品開発、共同による一括請負等個々の企業の保有する経営資源を最大限に活用するための相互応援体制への環境整備など、手探りではあっても、その可能性について検討することはムダではない。
また一方、インターネットの登場とともに企業や産業分野の情報化が加速度的に進み、企業経當にとっての意思決定や企業戦略を進めるうえでの情報の持つ重要性が格段に大きくなっており、いまや小規模企業といえどもなんらかの情報化対応が不可避となっている。造船の元請業界がCIM、CALSの構築等高度情報化への動きを加速させていることは協力業界として傍観していてはならないことであり、元請業界の動きに歩調を合わせ、経営資源の効率的活用手段としての可能性を含め業界べ一スでの情報化対応を進めていくことが必要である。

 

 

 

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